KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年5月号
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と言葉を選ぶように語ると静かに微笑んだ。これまで、取材してきた国内外の名優たちの多くが、出演作を選ぶ基準について質問すると、「いい脚本かどうかで決める」と毅然と語っていただけに、井浦さんの答えは新鮮だった。作品を選ばず様々な役柄にチャレンジする源泉はどこから湧くのだろうか。新作の小説や映画に新譜…。これら創作物が、漫然とこの世に生まれることはない。いずれも創作者たちが大切に温め蓄えてきたアイデアや知識を駆使し、紡ぎ出された想像力の結晶だ。「新たな物語が始まる瞬間を見てみたい」。そんな好奇心の赴くままに創作秘話を聞きにゆこう。第42回は、映画やドラマなどへの出演の他、美術番組のキャスターなどマルチに活躍。さらに活動の舞台は世界へと広がる。米映画に初主演した俳優、井浦新さんに聞いた。文・戸津井 康之出演作の大小の規模は問わず…脚本を超える覚悟で挑むTHESTORYBEGINS-vol.42■俳優■井浦 新さん⊘ 物語が始まる ⊘来、約25年間、幅広い役柄を演じながら数多くの映画に出演し続けている。では、出演を選ぶ基準は、やはり脚本なのだろうか?そう聞くと、「それも違いますね。もちろん、いい脚本であることは重要ですが、もし、そうでなかった場合、自分が演じることによって、この脚本をよりいい作品にできないだろうか…ということを考えるんです」相次ぐ出演依頼「映画で出演を決める基準ですか?作品の大小は関係ありません。大作でもインディーズ(芸術系)でも。呼んでくれたらスケジュールが許される限り、出演したいですから」。この言葉通り、全国数百館で公開される大作にも、小規模な芸術系の作品にも、井浦さんは俳優としてデビュー以20

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