KOBECCO(月刊 神戸っ子)2024年4月号
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磁ホーンにある向きの電流を流すとミューニュートリノがビーム状に絞られ、それが神岡に向かって飛ばされ、逆向きの電流を流すと反ミューニュートリノが神岡に向かって飛ばされるようになります。こうやって電磁ホーンの電流の向きを切り替えることによってどちらで実験を行うかを選択できます。そして、ミューニュートリノから電子ニュートリノへと変わるときのその変わり方と、反ミューニュートリノから反電子ニュートリノへの変わり方とで、違いがあるのかどうか、違いがあればそれはCP対称性の破れを意味していますので、どの程度の違いがあるのか、つまりどの程度CP対称性が破れているのか、を調べているのです。現在のところ、九五パーセントの確率でこの違いが見られています。そう言えば「ついにニュートリノでもCP対称性の破れが見つかったか!」と思われるかも知れません。しかし、物理学においては九五パーセントなど「兆しが見えた」程度に過ぎません。物理学で「発見」と呼る様子を捉える、という話をしました。実はこのとき反ミューニュートリノもつくることができます。正確に言えば、ミューニュートリノと反ミューニュートリノは同時につくられていて、そのどちらを神岡に向かって飛ばせるかを選べるのです。第6回が掲載されている号をお持ちの方は、そこに載っている「電磁ホーン」という装置の写真をご覧ください。この電CP対称性について証明する実験は行われているのでしょうか。その答えは、この連載をずっと読んでくださっているみなさんならご存じのはずです。そう、我々の行っているT2K実験(第6回)こそが、それに当たります。この実験では、ミューニュートリノを人工的につくり出して、それをスーパーカミオカンデまで飛ばし、その間に電子ニュートリノへと変化す物質を構成する素粒子の一覧第1世代クォークレプトン第2世代第3世代アップクォークuダウンクォークdチャームクォークcストレンジクォークsトップクォークtボトムクォークb電子e電子ニュートリノνeミューオンμミューニュートリノνμタウオンτタウニュートリノντ71

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