KOBECCO(月刊 神戸っ子)2024年4月号
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平成になって、如何にもハリウッドらしい『ダイハード』(89年)が現れて、封切り館で観ている。メモには「文句なくおもろい展開。この手の勧善懲悪にハリウッドは戻るつもりなのか。」と皮肉交じりに書いてある。予感どおり、翌年からシリーズになった。ブルース・ウィルスという新顔の特異な表情と体当たり演技はすぐに彼をスターに押し上げたが、その後、ボクは彼を見ることもなくなっていた。俳優は同じような役ばかり受けていると、役にな80年代が幕を閉じても、ボクはまだ世間でいう大人にはなっていなくて、少年の続きのままで現実を忘れようと映画ばかり観まくっていたようだ。「平成」に変わった年から雑記帳として使っていた、“映画は夢”と表紙に書いた大学ノートのページをまた繰っている。よくもまあこれほど毎日、日課のように劇場やビデオやテレビ放映であらゆる類いの映画を観ていたものだと感心してしまう。と同時に、そんなに毎日が暇だったのかと呆れてしまう。り切る「役者」を目指さなくなる人もいるが、ブルースは認知症を患い、引退してしまったのは残念だ。ボクは映画を観るか作るか以外、何の趣味も無く、映画体験のついでに生きるような日々を過ごしていた。そんな人生観をもったきっかけは、64年の東京オリンピックの熱狂が去った中学1年の終わりに、父親と大阪梅田で待ち合わせをして、OSシネラマ劇場でアメリカ映画の巨編、『バルジ大作戦』(66年)を見て打ちのめさ井筒 和幸映画を かんがえるvol.37PROFILE井筒 和幸1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm映画『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』セルDVD発売中。56

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