KOBECCO(月刊 神戸っ子)2024年4月号
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―上映を終えた今の手ごたえは?マヒトゥ 「手ごたえ」ですか?うーん、人生で一度も発したことのない言葉だな。「気持ち」はありますよ、嬉しい。以上です。未來 いろんな登場人物がいて、GEZANの自伝的な物語でもあり、その中にマヒトゥの世界観が貫かれている。ヒー兄やコウが喋っていても、その背後にマヒトゥがいる。そんな〝ナマ〟な雰囲気の中でずっと走っていました。「みんなで創った」といういい時間で、とても良い経験だったと改めて今、思っています。―『i ai』はどんな映画ですか。未來 観る人演じる人が空間を共有する舞台と違って、スクリーンに向かい、たとえ誰かと観ているとしても、自分と作品だけが向き合うというのが映画です。最後、コウが独白するシーンがこの作品のインタラクションを象徴しています。〝映画館で映画を観る〟という行為に非常にマッチした映画だと思います。―神戸出身の未來さん。オール兵庫ロケへの思いは?未來 海にも種類があると思うんですよね。抜けが良くてクリアな太平洋、もうちょっと白んでくる日本海、淡路島や四国で抜けが遮られ湿気が溜まり水平線や地平線が霞む瀬戸内海。明石から立ち上がってきたGEZANフロントマンのマヒトゥが瀬戸内海を想定してこの作品を書いた。その景色が切り取れないのなら意味がないと思っていました。だから「他の場所で撮るのなら僕はやらない」と言ったんです。結果、やれて良かった(笑)。マヒトゥ うん、海については未來さんがおっしゃる通りですね。生きていくということには「傷」が含まれていると思うんです。インターネットの住人ではない私たちは完璧ではない。普通に生きているだけでもいろんなものを自然に蓄え、混乱を積み重ねています。そんなことを許してくれるまち、いろんな人がいろんなカタチでいられる場所が僕は好きです。そんな匂いがちゃんとある場所で撮影できたことはとても嬉しい。―通常はスタッフだけで回るロケハンにも未來さんは一緒に来てくれましたね、水着姿の半裸で魚をぶら下げて(笑)。未來 僕も現場を見たいと思って行ったんですが、明確な場所が分からなくてウロウロしていたらデッカイ魚が捨てられてて…見ていたら「いる?」って聞かれて、「じゃあ」って貰ってぶら下げて…(笑)。僕が昔から知っている長い松江海岸と違って江井ヶ島は入り江っぽくて、初めての経験でした。映画の中でスタジオとして使った元旅館の赤い建物を見つけたのは大きかったですね。〝映画館で映画を観る〟「i ai」はこの行為にマッチした作品52

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