KOBECCO(月刊 神戸っ子)2024年4月号
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大工道具鍛冶が込めた想い ― 千代鶴是秀の切出小刀上:常設展「名工の輝き」コーナー(B2F) の千代鶴是秀展示ケース右:千代鶴是秀(1874~1957)竹中大工道具館 邂逅 ― 時空を超えて第七回木の細かな細工などに使われる小型刃物の一つ「切きりだしこがたな出小刀」。カッターナイフが普及する以前、大工、建具、木工、竹工、接木などの職人から、子供の竹とんぼ作りなどの工作をはじめ家庭用に至るまで、さまざまな用途で使われた身近な刃物でした。今日でも竹工や木工の伝統工芸分野の職人はよく使う手道具の一つです。短柵の一辺を斜めに切ったような単純明快な形で、先端で物が切れれば十分な刃物という性格から製作上・使用上の制約が少なく、手がける鍛治によって鉄の厚み・刃の角度・形状もさまざまです。大工道具鍛冶にとって切出小刀は、厳格な決まりがある鋸のこぎり、鑿のみ、鉋かんななどに比べ、使用上の制限が少ないことから、己の自由な発想を盛り込むことができる数少ない刃物といえます。その可能性をいち早く見出した人物が、大工道具を芸術の域まで昇華させた「不世出の鍛冶」とされる千ちよ代鶴づる是これひで秀(1874~1957)です。千代鶴是秀は四十代になる大正から昭和初期にかけてデザイン性がある切出小刀を比較的たくさん手がけるようになりました。そして14

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