KOBECCO(月刊 神戸っ子)2024年3月号
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怒涛の青春時代大震災が起こる度に話題となるSF小説「日本沈没」(1973年)など、今も読み継がれる数々の傑作を生み出した日本SF界の巨匠、小松左京(1931~2011年)。作家として遺した功績は多いが、一方で作家の枠を超え、数々の国際プロジェクトのブレインとしても尽力した〝知の巨人〟だった。ブレインとして尽力した一つが、1970年に大阪で開催された日本万国博覧会、通称〝大阪万博〟だ。開催に先立ち発足した有識者らでつくる「万国博を考える会」のメンバーとなり、「万博のあるべき姿、意義」を提言。その知識、視野は広く、湧き出るようなアイデアは壮大で、常に〝人類規模の未来〟を問い続けた作家だった。来年、2025年、再び大阪で万博(「大阪・関西万博」)が開催される。天国から彼はどんな期待を託すだろうか…。1931年、父が営む金属加工の工場がある大阪市で生まれ、4歳のときに兵庫県西宮市へ転居。その後、尼崎市などで暮らした。第二次世界大戦中と戦争直後の動乱期を兵庫県立第一神戸中学校、通称「神戸一中」(現在の兵庫県立神戸高校)時代に体験している。1975年発刊の自伝的エッセー集「やぶれかぶれ青春期」(旺文社文庫)の中に、神戸一中時代の青春の思い出が綴られている。巻末に記された関連年譜が興味深い。神戸一中時代の彼の年次と日本の歴史を重ねていけば、戦争という大きなうねりの中で彼がどんな思春期を過ごし、この経験が、後の作家人生にどんな影響を与えたかを読者に想像させてくれる。年譜を見ていこう。第二次世界大戦が激化する1943年、小松は12歳。この年、中学生以上の学徒の勤労動員が決定する。《神戸一中に入学。無我夢中の中学生活が始まる》と小松は記す。翌1944年、小松13歳。軍事教育全面強化発表。徴兵適齢一年繰り下げ(一九歳)発表。《中学二年生。「雑役」としてかり出されることが多くなる。友人をかばったばかりに、軍事神戸偉人伝外伝 ~知られざる偉業~㊼前編小松左京SF界のレジェンドの青春…神戸一中で育んだ創作の源泉146

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