KOBECCO(月刊 神戸っ子)2024年3月号
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『パスト ライブス/再会』今月の映画と本監督/脚本:セリーヌ・ソン出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ2023年/アメリカ・韓国/原題:Past LivesCopyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved 2024年4月5日(金) より全国ロードショー『キスに煙』著者:織守きょうや定価:1,870円(税込)文藝春秋96 thアカデミー賞授賞式を前にノミネート作品の中から、数々の映画賞を受賞し話題となっているラブストーリーをご紹介。ソウルに暮らすノラとヘソンは、互いに好意をもつ12歳。ある日ノラがカナダへ移住し離れ離れに。12年後、Facebook上で再会。変わらない想いは感じていたもののノラはNY、ヘソンはソウル。実際に会うことはしなかった。さらに12年の時が過ぎ、ヘソンがノラが住むNYへ。すでに結婚しているノラ。続きはぜひ劇場で!タイトルには「忘れられない恋があるすべての人へ」というメッセージが添えられている。どうすることもできない運命。言葉は少なく、表情や仕草、ふたりが見る街並みが語る。もしもあの時…と振り返る年月が多い大人ほど、共感できると思う。ところで、12歳の2人の分かれ道はY字路になっている。奇しくも今月の横尾忠則さんのエッセイのテーマはY字路。横尾さんは言う。「人生はY字路だらけ」。フィギュアスケート界で起こるこのミステリは、終始、洒落ていて、さりげなく記された英題『Kiss and Cry and Lie』がしっくりくる。スケート界に生きる2人の男性は、幼い頃からお互いを高め合い、尊敬し合い、時に嫉妬や羨望をもちながらも共に大人になる。1人が引退し、生きる場所は変わっても関係は変わらない。人の死、恋愛、未来への不安。日常ではいろんな出来事があるけれど、ちょっとした秘密をもちながらも、友を思い合う気持ちは美しい。意地の悪い噂、恐ろしい疑惑、焦り、猜疑心が襲ってきた時、2人は美しいままでいられるのか。途中から胸がざわついて、ノンストップで読み終えた。「誰かに盗られるくらいなら、あなたを殺していいですか」昭和の名曲、天城越え(石川さゆり)の歌詞を思い出した。対極にあるのが塩澤の恋心だと思う。恋したふたりは、24年後、NYで再びめぐり逢う。氷上のライバルたちの秘めた「選択」の行方は―公式サイトtext.田中奈都子117

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