KOBECCO(月刊 神戸っ子)2024年3月号
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が経験を積むと視覚が触覚の代わりを果たせるようになります。将来的には触覚が伝わるロボットも登場するでしょうね。―ロボット導入にはまだまだ課題もあるのですか。導入には大きなコストがかかります。これについては国内を含め新たなメーカーの登場による業者間の競争に期待したいと思います。手術時間が長くなるという問題については経験手術症例数増加によりだんだん慣れてきて、腹腔鏡・胸腔鏡手術と同程度まで短縮も可能だと考えています。内視鏡手術で使い慣れている止血しながら切れる優れたデバイスに多関節機能がなく、ロボットのメリットが生かせていません。これは技術開発に期待するところです。―ロボット手術は一気に普及したのですか。2012年に泌尿器科領域の前立腺がんに対するロボット手術が初めて保険収載され、現在は前立腺全摘手術の約90パーセントで行われています。18年には消化器外科領域でも胃がん、大腸がん、食道がんが保険収載され増加傾向にあります。―どの領域まで可能になっているのですか。今後は?泌尿器科領域で前立腺、腎、膀胱など7術式、消化器外科領域で食道、胃、直腸など11術式をはじめ、婦人科、呼吸器外科、心臓血管外科、耳鼻咽喉科など全29術式が保険収載され、その多くが悪性腫瘍です。例えば消化器外科では、実際に手術症例が多い鼠そけい径ヘルニアや胆石症といった良性疾患はロボット手術の保険収載がなく、テクニックやデバイスを工夫して通常の腹腔鏡手術を行っています。ロボットの多関節機能により、さらに手術手技が容易となる可能性があり、外科医、患者さん共にメリットがあるのですが…。今のところロボット手術は全体の20~30パーセント程度にとどまっています。ロボット手術が優れていることを実証するデータを積み重ねていく必要があります。―志望者が減っている外科領域の救世主にロボットがなれるのでしょうか。座ったまま行えるので外科医のQOLを上げ、視力や手指の動的能力などを飛躍的に向上させ、外科医としての寿命を延ばすロボット手術に若い先生方は高い関心を持っています。さらに、女性外科医の増加にも貢献する可能性があると考えられます。109

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