KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2024年2月号
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 日本人はどんな神様を信じてもいいし、考え方も自由です。でも、どの国にもその国の“らしさ”があるように、“日本人らしい”考え方って昔からあるように思います。 『武士道』が、海外ではいまだに日本人らしさと見られていると知って、僕も読んでみようとチャレンジしてるんですけどね。圧がすごい。「方正、お前、また酒を飲んだらしいな」。怖い声が聞こえてきそう。厳しいんですよ、武士道。「腹を切れ」とか言われそう(笑)。僕、気持ちが弱いから、とても読めないです(笑)。 その点、落語は「そうか、方正、また飲んだか。まぁ、次からはがんばれよ」って(笑)。落語にはどうしようもない酒呑みが登場しますけど、情けがある。赦し、認める。だって人間って弱いものでしょ。Q.確かに、落語の神様は懐が深い。 『井戸の茶碗』って噺があるんですけど、300文で買った仏像から50両が出てくる。売った人、買った人どちらのもの?っていう。「わしのものだ!」っていう喧嘩じゃない。どちらも善人で仲介人も善人なので「わしの物ではない、返して参れ」の繰り返しになる。正直でしょ。演じていると僕の魂も返してるんです。登場人物と同じく、僕も正直な人間になってる。 元は辻噺といって寺社の境内なんかで聞かせる身近にある芸でしたから、人は落語を聞くことで学んでいたんじゃないかなと思うんです。人として大事なこと。僕がそうですもん。失敗を許してもらいながら、時間をかけてですけどね。どんどんいい人間になっていくと思いますよ、僕。そういうところ。落語っていいですよ。photo・黒川勇人text・田中奈都子プロフィール月亭 方正(つきてい ほうせい)1968年、兵庫県西宮市生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー大阪本部所属。本名・旧芸名:山崎 邦正(やまさき ほうせい)。2013年1月より芸名を高座名「月亭方正」に改名。2009年12月上方落語協会入会。2019年 東京理科大学 臨時講師就任。2008年 自身初の写真集&エッセー「奇跡」を出版。2013年「僕が落語家になった理由」出版。2018年「落語は素晴らしい–噺家10年、根多が教えてくれた人生の教え」出版。2020年 Ho-Say音楽プロジェクトとして「落語×音楽」の融合に挑戦した楽曲「看板のピン」配信リリース。西宮えびす亭のInstagramはコチラから29

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