KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2024年2月号
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Q.「こんにちは」って靴を脱いで入るえびす亭の雰囲気、いいですね。 西宮神社も近いし、駅も近くていいでしょう。ここに“笑う場所”を作るのもいいなと思ったんです。目的は特になく、そう思っただけ。どんな人にも好きなように来てほしいし、落語家さんにも自由にどうぞって言ってます。落語だけでなくお客様感謝祭をしたり、1人で6席っていう実験的なことに使う人もいたり。Q.方正さんはどのようなことを? ネタおろしはここでします。お客さんの様子が全部見えて、チラッと時計を見るとか、緊張するんですけど。その緊張感もいいかな。 普段、僕は、客席を暗めにしてもらうんです。話を“聞いてる”だけでなく“想像する”ことで落語はおもしろくなるので、話の世界により入っていけるように。演出としては舞台と客席を分けますけど、頭の中では繋がるというか、一体感が生まれると思ってます。 その演出がね、この小さな寄席ではできない。ここは明るい話に向いてると思う。しんみりした人情噺はほとんどしていないです。「あ~おもしろかった」って帰ってほしいから。Q.落語はお好きでしたか? いいえ、全然(笑)。 1968年生まれの僕には生まれた時からテレビがあって、ドリフターズ、ひょうきん族、ダウンタウン。おもしろすぎて僕らの世代に落語が入る余地はなかったです。歌舞伎、文楽、狂言の並びに落語があった。おじいちゃんがやるみたいな。 テレビで仕事する芸人として、新しいものを次々作っていかなくてはいけない。長い間そんな世界にいましたから、古いものはいらない、壊す、潰す。古典芸能から学ぶ気がなかったんです。Q.でも職業にするほど好きになった。 そう。不惑の年齢ですよ。お笑いの世界で突っ走ってきて、名前も知ってもらえてこんなもんだろうと思ってたのに。孔子さんってすごいですね。 きっかけは同い年の先輩、東野幸治さん。当時モヤッとしていた気持ちをちょっと話すと、 「落語聞いたら。枝雀とかおもろいで」 「落語?いいですって。そんなおじいちゃんみたいな」 僕はまったく聞く気はなかったんですけど、次に会った時に「聞いた?」って聞かれるでしょ。「聞いてない」とは言えないから渋々TSUTAYAで桂枝雀のCDを借りて。で、あっさりはまったんです。Q.枝雀さんすごいですね。 『高津の富』でした。ネタも良かったし、まくらも良かった。どうせ古臭い話だろうと思ってたら、「宝くじってすごいですねぇ。1億なんぼですよ」から始まって、僕、ピクッとしました。そこからもう、ターターターターッと始始まりは不惑の年。27

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