KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2024年2月号
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鋭くかつ優美に ― 宮野鉄之助の鋸竹中大工道具館 邂逅 ― 時空を超えて第五回鋸鍛冶の最高峰と評された二代目宮みやのてつのすけ野鉄之助(一九〇一―九六)。日本刀の流れを汲み鋭くかつ優美な鋸を鍛えたことで知られています。TV番組「なんでも鑑定団」にて作品が鑑定されたことでも有名です。宮野家は金物の産地・兵庫県三木で代々続いた鋸鍛冶の名家。刀匠としても活躍し、一八八四年に湊川神社に日本刀を奉納して同社御用鍛冶となっています。二代目宮野鉄之助は同じ三木の鋸鍛冶・遠藤家に生まれ、父のもとで修行したのち、初代鉄之助の長女と結婚。一九三八年に二代目を襲名しました。二代目鉄之助の名声を高めたのは、伝統の玉たまはがね鋼すら使いこなす高い技術力でした。近代的な鋸は均質な洋鋼を用いますが、玉鋼は鉄塊を叩き潰し、薄く均一な鉄板にしなくてはなりません。鉄之助はこの玉鋼を用いて戦前から戦後にかけて多くの名品を残しました。同時代、技術力を誇る鋸鍛冶は他にもいましたが、鉄之助が頭抜けていたのは芸術的感性にもとづく造形力でした。鋸の形状は定型化していて造形の余地が無いようにも見えますが、彼の作品は全体プロポーションや細部にどことなく優美さがあります。鉄之助は職人でありながら、座禅を組み、茶を楽しみ、書画もよくこなしました。そこで磨かれた感性が作品に滲み出ているのでしょう。鋸を単なる工具から工芸品の域まで高めた二代目宮野鉄之助。その作品は当館名品コーナーでご覧になれます。あわせて記録映画「玉鋼から木の葉鋸をつくる」をビデオライブラリーで視聴するのもオススメです。(主任学芸員・坂本忠規)14

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