KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2024年2月号
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Q.楽器をお持ちくださったんですね。美しい。三浦 演奏してる時はもっと美しいです。今はもう生産していないんですよ。1938年生まれのこの古い楽器を、修理しながら使っています。古いけど音色は素晴らしいです。 タンゴはアルゼンチンで演奏されることが多いけれど楽器はドイツ生まれ。色々と謎多き楽器です(笑)。Q.楽器との出会いは?三浦 10歳の時、何気なく見た音楽番組でした。その日はタンゴ特集で、耳にしたことのない音が流れ始めたんです。画面には見たことのない楽器がアップで写っていて、だんだんカメラが引いていくと、人が抱えて弾いていた。小さな楽器なのに大きな存在感。「僕もこの楽器を弾きたい!」。運命を感じて、背筋がゾクッとなったのを覚えています。Q.惹かれたのは音色?見た目?三浦 まずは音色。音色というか、ピアソラという作曲家が作った音楽でしょうね。 それと、僕はメカが大好きだったので、カメラやラジカセに興味を持つのと同じ感覚で楽器のフォルムに興味を持ったと思います。ケースに入れているとカメラと間違えられますよ。最近はUber Eatsにも(笑)Q.謎多き楽器をどう手に入れて、どう習得したのですか?三浦 初めての師匠、小松亮太さんのサイン会に並んで、「バンドネオンをやりたいんです!」。小松さんが「えっ、マジで?」って言ったのを覚えています(笑)。次の次の日には小松さんから僕宛に楽器が届きました。ドレミファソと順番に並んでないし、教則本も日本語訳なんて出ていない。自分で覚えていくしかないんです。毎日毎日、神経衰弱みたいに音を探しながら覚えていきました。遊びで使う脳を、僕はバンドネオンに使ってたということです(笑)。Q.10歳の子どもの運命を決めた曲とは?三浦 『オブリヴィオン』。忘却って意味で、哀しみをうたっているのがかっこいいと思って。子どもですから哀しみなんてわかっていないけれど、人の悲哀を表現することに憧れはありました。現在も理解はできていないし、表現も難しいですね。Q.アストル・ピアソラはなぜ人気があるのでしょう。三浦 世界中で愛され演奏されていることを考えると、世界共通の普遍的ないいもの、本能で感じるいいものがあるというところでしょうね。聴く側も飽きない、弾く側も飽きない。飽きるどころか僕、コンサートでさんざん弾いた帰りの車中でもピアソラを聴くんですよ(笑)Q.奏者として感じている魅力は?三浦 人間…。ピアソラの感性バンドネオンとの出会いは10歳アストル・ピアソラとキンテート115

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