KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2024年2月号
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Vol.02施設で出会った忘れられない子どもたち愛の手運動は親に育てられない子どもたちに、里親・養親を求める運動です。募金箱の設置にご協力いただける方は協会にご連絡ください。公益社団法人 家庭養護促進協会 神戸事務所神戸市中央区橘通3-4-1 神戸市総合福祉センター2FTEL.078-341-5046 https://ainote-kobe.orgE-MAIL:ainote@kjd.biglobe.ne.jp子どもの施設が完成して、最初に入所してきたのは4人の幼児さんでした。2歳のMちゃんは父子家庭で、お父さんとの二人暮らしでした。身体にひどいやけどをしており、両手の指はなくなっていました。冬にストーブの上に置いて沸かしていたやかんにぶつかり、熱湯を浴びて指が溶けてしまったのです。お父さんが週末に面会にきて外出し、施設に帰ってお父さんと別れると、その夜に寝ると「パパ、パパ」と夜泣きをしていました。3歳のKちゃんは脳性麻痺で歩くことができず、這って移動していました。保母さんに抱っこしてもらって甘えたいときは、時々「おしっこ」という演技をして保母さんに抱っこしてトイレにつれて行ってもらっていました。当時、8人の子どもたちを一人の保母さんが担当していたので、子どもたちにとっては競争相手がたくさんいるために、なかなか甘える機会が無く、子どもたちは頭を絞って、職員の気を引く態度や行動をとることがありました。2歳のYちゃんは元の家族の所には帰れない事情があり、里親の元で暮らすことになりました。兵庫県の北部の里親に委託することが決まり、引き取られて行く朝、担当の保母さんは別れがたく、目を真っ赤に腫らしながら見送っていました。それから10数年後に、わたしは現在の職場が主催するキャンプをしているときに、Mちゃんを里親に委託した当時の担当の職員を訪ねてキャンプ場まで足を運んできたときに、出会うことができました。2歳で里親さんの家庭に迎えられたときは、鼻を垂らした青白い痩せた身体だったのに、10数年たって再会した彼女は大変健康的なほがらかな女性に育っていました。里親さんの家庭で、よくかわいがられて大切に育てられたということが実感できました。この施設で出会った多くの子どもたちはあれから半世紀あまりたち、今はどこでどのように暮らしているのかは知ることができませんが、時々「どうしているんかなあ」と思い出します。出会いと学びの旅から公益社団法人家庭養護促進協会事務局長橋本 明112

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