KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2024年2月号
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―そこで不妊治療が選択肢になるのですね。最近は卵子凍結を選択する女性が増えていますね。神大病院に限って言えば、若年のがん患者さんを対象にした不妊治療です。抗がん剤治療は卵子や卵巣、精子にダメージを与えますから事前に取り出し、パートナーがおられる場合は受精卵を、提携する不妊クリニックで凍結保存します。がんが落ち着いた時点で不妊治療を始めますが、直接的ではなくがん生殖ワーキングチームを作り、適切な不妊治療が進められているか見守り続けるのが役割です。一方、妊娠はしても流産を繰り返す不育症については大学病院で直接的な治療を行っています。―どんな治療ですか。原因不明なことが多いのですが、原因の一つに血管内で血の塊ができて細かい血管が詰まり易くなる体質が知られています。この場合はヘパリンやアスピリンといった血の塊ができにくくするような薬で治療します。原因が免疫に関わる難治性不育症に対しては免疫グロブリン大量療法で対応します。これは神大病院を含めわずかな医療施設だけで行われている先進的な治療法で全国から患者さんが来院されます。―リスクを抱えた妊婦さんが出産するのですか。高血圧や糖尿病、心臓疾患、腎障害、自己免疫疾患(膠原病)、精神疾患など持病がある妊婦さんは専門の診療科があり24時間365日対応可能な病院で、より安全に出産しなくてはいけません。麻酔科の先生がおられるので負担がかからないように無痛分娩も可能です。放射線科の先生も常時待機しておられるので、産後出血といった母体の出血が激しく救急搬送される患者さんにはカテーテルを使う血管内塞栓治療での対応も可能です。胎児エ109

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