KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2024年2月号
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andcarsMovie クラウン(スティーブ・マックイーン)は為替や不動産を手掛ける会社の社長で富豪である。ポロはプロ級の腕前で、ロールスロイスシルバーシャドークーペを運転して出社する独身紳士。そんな実業家としての表の顔と、なんと裏の顔は泥棒である。緻密な計算と周到な計画そして実行することは、お金に不自由していない彼にとってスリルを味わう冒険(賭け)のようなもの。クラウンはオフィスの前にある銀行を白昼に襲撃する計画を立てて、面識のない4人に的確な指示を出し襲撃を見事に成功させる。奪ったお金はジュネーブの銀行に自分のお金も足して預金、共犯者4人には定期的に報酬を送金する仕組み。周到な計画にボストン警察は手掛かりを一切掴めずお手上げ状態、銀行が加入している保険会社の調査員ヴィッキー(フェイ・ダナウェイ)は、ボストン警察のマローン刑事と手を組み情報を共有して事件解決の糸口を探るために動く。そしてヴィッキーは襲撃の首謀者がクラウンだと睨んだ。ヴィッキーは愛車フェラーリ275でクラウンが出入りするポロ競技場やオークション会場に乗り付ける。ヴィッキーとフェラーリの美しさはクラウンの目を奪うのに十分だった。ヴィッキーは銀行襲撃の捜査をしているとクラウンに話すのだがクラウンは一切動じない。クラウンはヴィッキーの捜査という挑戦を受けるつもりで交際を始める。二人は心理戦を繰り広げるが、証拠を掴めないままヴィッキーは次第にクラウンに恋愛感情を抱く。クラウンは再び冒険(賭け)計画を立て、実行後に南米に逃げる決心をする。その計画をヴィッキーに打ち明けて一緒に南米への逃避行に誘った。襲撃は実行され成功したかに見えたが、盗んだ金の受け取り場所にはマローン刑事、ヴィッキー、ボストン警察が待ち構えていた。そこにロールスロイスが現れる、クラウンの運もこれまでか。車に近づくヴィッキー、だが乗っていた男は別人であった。ヴィッキーは男からクラウンのメモを受け取る。「南米で待つ」。これもヴィッキーへの「華麗なる賭け」だった。恋人が警察から逃れたこと、動きを読まれた悔しさなどの感情が入り乱れ空を仰ぐヴィッキー。ちょうどその時、クラウンは南米に向かう飛行機の中、目を閉じて唇を緩めた。ミシェル・ルグランの「風のささやき」がクラウンの心情とストーリーを引き立たせる。古き良きアメリカ、二人の心の動きを見事に映し出す秀作。フェラーリ275・GTS/4/NARTスパイダー1967年式1964年に発表された275シリーズ。当時のフェラーリは全てが12気筒であったため1気筒の排気量を車名に取り入れた。275は1気筒275㏄×12気筒で3,300㏄を意味する。1966年には後期型としてボディを90mmロングノーズ化、カムをOHCからDOHCに改良。6基のウェーバーを介して300馬力のパワーを発揮、ピニンファリーナの美しいボディーラインとクォリティーの高いエクステリア、素晴らしいエンジン音は誰をも魅了した。最高速度は268Km。NARTは北米最大のフェラーリ輸入販売会社が持つノース・アメリカン・レーシング・チームのこと。フェラーリ社からレース仕様として納車、あるいはNARTでレース仕様に改造される車両が多かったが、劇中の車両は希少なスパイダーモデル(10台)でレース仕様に改造は成されていない。さらに稀なアルミボディ(2台)であることも付け加えたい。文・株式会社マースト  代表取締役社長 湊 善行映  画:『華麗なる賭け』1968年 アメリカ (102分)登場車両:フェラーリ275・GTS/4/NARTスパイダーFERRARI 275 GTS 4 NART SPIDERSimlinger@shutterstock 10

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