KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2024年1月号
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前回までは、何回かにわたってニュートリノについてお話ししてきましたが、今回は少し違って反物質についてお話しします。しかしこの反物質が、実は前回お話ししたニュートリノ振動実験と深く関わっていることが、次回以降におわかりいただけると思います。さて、反物質などと言うと、なんか胡散臭い話をしているように思われる方もおられるかも知れません。しかし、反物質は物理学の理論体系に組み込まれているものですし、実験的につくり出すこともできる、実在するものです。今回は、これがどのようなものかについてお話しします。反物質、素粒子の世界で言うと反粒子は、ある粒子に対して、電荷などの性質がちょうど反対になっている粒子のことです。たとえば電子に対する反粒子は、陽電子と言って、電子が負の電荷を持っているのに対して、全く同じ電荷量で正の電荷を持っています。それ以外の質量などの性質は全く同じです。この反粒子は、物質を構成する全ての粒子に対して存在します。たとえば、アップクォークに対して反アップクォークが存在しますし、ミューニュートリノに対して反ミューニュートリノが存在します。第4回で「物質を構成する素粒子は一二種類ある」と言いましたが、反物質を構成する素粒子は、それに対応して同じく一二種類あります。ここで、「電荷が逆? ニュートリノはそもそも電荷を持たないのではなくて? 逆とはどう多田先生!ニュートリノと 宇宙のはじまり教えて 連載〜第7回〜 反物質とは?宇宙のはじまりとは―。最初に存在した最も基本的な物質、つまり素粒子を組み上げて恒星や銀河系をつくり、宇宙は出来上がったと考えられています。素粒子のひとつニュートリノを研究することで、なぜ宇宙の始まりが解明できるのか、この連載で素粒子物理学者の多田将先生に教えていただきます。70

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