「大工と雀すずめは軒のきで泣く」という言葉があります。屋根の軒廻りをきれいに納めるのに大工が苦労するさまを、軒先でチュンチュンと鳴く雀にかけたものです。屋根は雨水を流すために斜めに傾いていますが、建物の隅に行くと、屋根を支える垂たるき木を隅すみぎ木に差し込む必要があります(写真中模型参照)。そのホゾ穴や切り口は水平方向にも垂直方向にも斜めになり複雑な立体幾何学になってしまいます。寺院や神社では屋根が反り上がっているためさらに大変になります。とはいえ、きれいな屋根のラインをつくるにはホゾ穴を正確に墨付けする必要があります。そこで大工はこの難問を図法で解いていく技術を編み出しました。これが大工技術の真しんずい髄といわれる規きくじゅつ矩術です。大工棟梁が習得すべき技の一つであり、また最大の技術的難関でもあ立体幾何学としての大工技術曲尺を用いた墨付け―規矩術模型竹中大工道具館邂逅―時空を超えて第四回16
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