KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2024年1月号
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佐々木先生にしつもんQ.先生の健康法やリフレッシュ法は?A.昔はがんを治療中の患者さんに「安静にしてください」と言っていましたが、今は「できるだけ体を動かしてください」とお伝えしています。体を動かすことで風邪をひきにくい、がんが再発しにくくなります。日本ではまだ広く知られていませんが、運動と健康(がんの抑制)との関係には、古くから報告があります。そこで、私が実行しているのは自らも筋トレなどで生活に運動を取り入れることです。また、リフレッシュ法は絶えず海外の医師や研究者たちと交流を持つことです。職場や、日本の中だけで考えていると些細なことに注力してしまい、本当に重要なことを忘れがちです。世界と日本の違いを肌で感じ、世界レベルで物事を考えることが、医師として、一人の人間として、とても大切だと考えています。Q.病院で患者さんに接するに当たって心掛けておられることは?A.がんは命に関わる病気です。「大丈夫かなあ」と心配で気分が滅入っておられる多くの患者さんが勇気を持って自分らしい生活をできるように治療面、精神面でサポートしようと心掛けています。これは機械やロボットにはできません。人と人が向き合うからできることです。Q.大学で学生さんに接するに当たって心掛けておられることは?A.がん治療医は、臨床の現場でいきなり教科書には載っていない様々な状況に遭遇します。社会経験の少ない学生や若い医師たちが戸惑うのは仕方のないことです。私が学生たちに日頃から話していることは「調べても分からない、答えがない状況では、自分が正しいと思う治療方針を患者さんに伝えてください。患者さんには必ずその努力は分かってもらえるから」もう一つは「自分の家族に対して行いたいと思う治療方針を心掛けなさい」ということです。Q.佐々木先生はなぜ放射線腫瘍科の専門医になったのですか。A.私が医学生のころは、昨今とは違ってがん患者さんの状態は重篤で希望が持てることが少なく、様々な疾患の中でも一番困っておられるように思えました。当時は放射線科医が緩和医療の大半を担っていたので、死に直面している患者さんに直接に向き合いたいと考えて専門にしました。今では緩和医療のマンパワーが充実され、役割分担ができるようになり、私たちはより専門的にがんを治す根治的な放射線治療に取り組めるようになりました。患者さんにとって、当たり前の治療法の一つになったことを感じています。―今後も増えるのでしょうね。高齢化社会ですから、手術のリスクが高い患者さんや他の疾患を持つ患者さんなどに対して、需要はますます増えると思います。がんと告知されてもそれまでの日常生活を続けながらがん治療ができるのが理想の放射線治療です。治る病気を確実に治すのががん治療医の第一の使命です。次に大事なことは、治らない病気を治す方法を研究によって開発することです。少し前には治らないとされていた病気でも、研究の成果で今ではしっかり治せますよ。とお伝えでき、一人でも多くの患者様やその家族を笑顔にしていきたいと日々努力を続けています。109

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