KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2024年1月号
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少なくなり、患者さんにとって優しい治療ができるようになりました。その結果、より治療効果が高くなりました。―最新の方法にはどんなものがあるのですか。主流の高精度放射線治療は、強度変調放射線治療(IMRT)と定位放射治療の2本柱で、数ミリレベルの精度でがんの部分だけに放射線を照射します。非常に高価な治療機器と専門職スタッフが必要ですが、治療機器を置いたからといってできるものではなく、技術とマンパワーがそろった施設でのみ可能な最新の治療法です。―マンパワーとは専門医と放射線技師ですか。それに加えて医学物理士という専門職スタッフがいなければ高精度放射線治療はできません。ところが日本には人材がほとんどいないため技術が向上しないというのが大きな問題でした。2006年にがん対策基本法が成立し、手術以外のがん治療を充実させようと「次世代のがんプロフェッショナル養成プラン」が立ち上げられました。この施策が第5期に入り、放射線腫瘍医をはじめ医学物理士の育成が順調に進み、かなりマンパワーが増えてきています。―「放射線は怖い」というイメージがありますが、使い方によっては非常に有益な手段なのですね。放射線に対するイメージはかなり変わりつつあります。それは放射線治療を受けてがんから回復した多くの患者さんからの「放射線治療を受けて良かった」という実体験からの発信だと思います。もちろん放射線を照射する限りは正常組織へのダメージは皆無ではなく副作用もあります。それをいかに最小限にするか、いかにケアするかが大切で、様々な軽減するための選択肢があるのも現代の医療です。私は30年余り携わっていますが、この副作用のケアの部分でも大きく進歩し、放射線治療ががん残っている、あるいは残っている可能性が高い場合は術後の補助療法として放射線治療を行います。最も分かりやすい例は乳がんです。昔は乳房、大胸筋、小胸筋、脇のリンパ節まで手術で徹底的に取り除いていました。胸はあばら骨が見え、腕は腫れ、これでは患者さんにとってはつらい状態でした。ここ20年ほどで日本でも縮小手術と術後放射線を組み合わせた乳房温存療法が一般的になりました。腫瘍は取り除いても残りの乳房をきれいに残して、最も転移しやすいセンチネルリンパ節だけを手術で取ってから、乳房に対して放射線を照射します。再発を防ぎ、根治を目指せるようになりました。―放射線を使う治療技術が進歩したということですか。 まず、放射線治療機器の進歩が大きく貢献しています。例えばがん周囲の広範囲に放射線を照射する必要があったものが、まさにがんがある狙った部分だけに放射線を照射することが可能になり、それに伴い副作用が108

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