以前から放射線科と外科がタッグを組み、粒子線治療と外科手術を融合させて、今まで治せなかった様々な疾患に対して治療域の拡大を目指した取り組みを積極的にすすめてきました。これはわれわれ、肝胆膵外科の特徴的な先進医療のひとつです。―切除しても再生する肝臓の場合、がんの治療は手術が一番の選択肢ですか。一番の根治治療は外科手術です。しかし、切除すると肝機能が低下して肝不全に陥る可能性があるような患者さんは、手術は控えた方がいい事もあります。最近は抗がん剤治療や放射線治療も非常に進歩しているので、他科の先生方と議論しながら、患者さん一人一人の病態にあわせて最良の治療方針を決めています。―肝臓移植は最後の手段ですか。肝臓は再生可能な臓器ですが、肝硬変や肝不全に至って、ある一定レベルを超えてしまうと、「不可逆性」といって肝機能が戻らなくなってしまいます。どんどん肝機能が低下していき、薬や点滴など内科的な方法ではどうにもならず、肝移植しか助かる方法がなくなってしまいます。―神大病院ではどれくらいの肝移植手術が行われているのですか。ご家族から肝臓の提供を受ける生体肝移植と脳死の方から肝臓の提供を受ける脳死肝移植合わせて年間5~10例程度です。肝臓は解剖学的に右葉と左葉の2つに分かれており、生体肝移植の場合、提供者(ドナー)からどちらか半分の肝臓をいただき、移植希望者(レシピエント)に移植するのですが、さまざまな条件をクリアできなくてはご家族でもドナーにはなれません。また日本のシステムでは現状、肝硬変や肝不全でもかなり重篤な状態にならない限り脳死肝移植での肝臓提供を受けることができず、全国で多くの患者さんが待機しておられます。―肝がんや膵がんの早期発見の方法は? 良性の疾患であれば痛みや発熱という症状が出ることもあります。膵臓もがんの場所によって術式が変わるだけでなく、周りには動脈や門脈など体にとって非常に重要な血管がたくさん集まっているので傷つけないように手術をしなくてはいけません。近くにある血管にがんが浸潤しやすく、合併切除や再建手術が必要なこともあり、非常に高い専門性が求められます。胆のうがんや胆管がんはがんの浸潤範囲を正確に確認して、切除範囲をミリ単位で判断する必要があり、非常に繊細な技術や経験が必要な手術になります。また、大学病院は専門性の高い診療科がそろっているので、自分達の専門外の病気や手術後の合併症・病態に対しても、しっかり治療して頂ける環境が整っているのも大変心強いと感じています。―最先端の手術法も取り入れられているのですか。肝胆膵外科領域にも腹腔鏡手術だけでなく、近年ロボット手術も保険収載され、大学でも、腹腔鏡やロボット手術の占める割合が年々増加しており、今後も増えていくと思います。また、98
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