KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年12月号
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建てた建築に用いられている栃木県産の大谷石で、正方形と長方形の石材を用いて規則的に組み合わされている。また、石材には主屋の外壁と同じような飾り彫りが施されており、細やかなところまで手を抜かないライトの性格が垣間見えて面白い。渡り廊下の東端には温室の遺構が。温室へ続く階段やタイル張りの温室の壁の破片も出土している。残念ながら温室の大半と、さらにその北側の使用人住居が存在した場所は東側の道路が拡張された際、削られてしまっている。そして今回、前出の『新建築』の文中でのみ記されていた池と、それまでその存在が全く知られていなかった滝の遺構が発掘された。池の底はモルタルで、ところどころに石が埋め込まれていることがはっきり確認できる。また、池の縁に花崗岩を並べていたこともよくわかる。滝は自然石を組んだもので、高さは1.4mほど。そこから池に向けて、モルタル張りの水路を水が流れたのだろう。滝に向かって左側には、クサビの穴が並ぶ巨石が。大坂城築城時にはこのあたりの石が使われたが、その際に運ばれずにうち捨てられたいわゆる〝残念石〟を庭園の景石としたようだ。発掘現場のみならず、出土品も一部公開されたが、中でも目を惹いたのは麻袋に詰めて廃棄されていた擬石の材料。主屋の装飾部分に使用されているものと同じ材質とみられる。今回の発掘は神戸大学名誉教授の足立祐司先生の監修、芦屋市教育委員会の監理でおこなわれたが、今後の調査については方法などを検討中とのこと。さらなる調査により、「芦屋の宝」の価値により磨きがかかることを期待したい。今回はじめてその存在が明らかになった滝の遺構。徳川大坂城の残念石が庭石に使用されている滝から水が注いだと思われる池の跡。底にモルタルを施していた出土した温室の壁の一部。煉瓦の下地にモルタルを塗りタイルを貼っている8383

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