前回は、ニュートリノの性質の中でももっとも重要なニュートリノ振動と、それを人類で初めて捉えた大気ニュートリノ実験についてお話ししました。今回は、そこからさらに進んだ実験、僕が現在携わっている実験についてお話しします。大気ニュートリノ実験は素晴らしい実験ですが、ひとつ大きな問題があります。それは天然のニュートリノを使っていることです。このことは、わざわざニュートリノをつくらなくてよい反面、自分たちの思い通りにはならないことも意味しています。もっと数が欲しくても、もっと違った条件(エネルギーなど)のものが欲しくても、天然のものを利用している限りは、自然に任せるしかありません。そしてより重要なことは、自然任せだと、ある「仮定」が入ってしまうのはやむを得ない、ということです。前回、「地球上の大気の主成分はどこでも同じだから、地球上どこでも同じだけの大気ニュートリノがつくられていると考えられる」と言いましたが、本当にそうでしょうか。誰もそれを確かめたわけではありません。ブラジルは情熱の国ですから、日本よりも大気が「熱い」かも知れませんよ?多田先生!ニュートリノと 宇宙のはじまり教えて 連載〜第6回〜 長基線ニュートリノ振動実験宇宙のはじまりとは―。最初に存在した最も基本的な物質、つまり素粒子を組み上げて恒星や銀河系をつくり、宇宙は出来上がったと考えられています。素粒子のひとつニュートリノを研究することで、なぜ宇宙の始まりが解明できるのか、この連載で素粒子物理学者の多田将先生に教えていただきます。62
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