KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年12月号
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は格好いいはず…」 気の弱さをひげで隠し、スクープに野心を燃やす雑誌記者…。憲太郎役に林さんを抜擢した熊澤監督には、こんな目論見があったという。「成長した姿を見せたかった」と語る林さんとの再会。「久々に会った林遣都は〝化け物〟のような俳優になっていた」と熊澤監督に言わしめた。「僕は直接、その言葉を聞かされていないんですよ。共演した上野樹里さんから、監督が、そう言ってましたよ、と教えてくれたのですが」と少し照れた表情を浮かべた。「食べること」よりも大事なことクランクイン(撮影開始)の前。 「初顔合わせの日でした。熊澤監督と上野樹里さんと僕との3人で撮影所の会議室に集まり、ホン読み(脚本のセリフを読み合わせること)をしました。その日は、ホン読み後、食事会が予定されていたのですが、上野さんが『このまま続けませんか?』と。実は僕も望むところでしたので、その日、夜までホン読みを続けました。予定していた食事会ですが、結局、その日はそのままみんな帰宅し、その後も、まだ一回も実現していないですね」と笑った。名作とはこんな現場から生まれるのだろう。今年7月から9月まで放送され、社会現象ともなった人気ドラマ「VIVANT」(TBS系)で、国際テロ組織のリーダー、ノゴーン・ベキを演じた役所広司の30年前。若き日のベキ=公安刑事、乃木卓を熱演し話題を集めた。また、取材のこの日(11月15日)は、北野武監督の若かりし頃のビートたけし役で主演する舞台「浅草キッド」の全国公演の真っ只中だった。かつての教え子を、熊澤監督は〝化け物〟のような俳優になっていた…と評したが、この言葉は決して大げさではない。役所広司と北野武の若い頃23

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