第1章の異界の旅を締めくくるのは横尾さんの永遠のテーマ、「死」の向こう側。ここに横尾さんの死生観を表す1冊の本が差し込まれています。泉鏡花文学賞を受賞した横尾さんの小説『ぶるうらんど』の中に「アリスの穴」という一編があるのですが、日常と死後の世界が緩やかに繋がったこの物語で、登場人物は「不思ら間もない頃のこれらの作品は、パリ・ビエンナーレやサンパウロ・ビエンナーレのために制作されました。グラフィックデザイナーとして既に高い評価を得ていた横尾さんが、画家として世界に打って出る大舞台。国際展への意欲と、画家としての試行錯誤が同居していて、混沌としながら緊張感のある作議の国のアリス」を読んでいます。また、この展示室には、絵画と寄り添うように1970年代の版画やポスターが並んでいます。インドへの関心や楽園への憧れ、宇宙や精神世界の探求が現れた作品です。さらにその内側に回ると、暗闇で光を放つ12点のライトボックス。宗教的な世界観と宇宙や滝のイメージが合成され、瞬く光や流れ落ちる水を見ていると心が浄化されるようです。第2章の「鏡の国」では、キャンバスを地に立つアリスの人形がお出迎え。狂気さえ感じさせるこの作品が誘う鏡の向こう側は、少し危険な香りがします。銀の壁紙で覆われた空間に入ると、鏡の破片を貼り付けたり、鏡文字を使った作品が展示されています。日本の神話、聖骸布、宗教画を取り入れた死と救済のイメージが、激しい筆致と大胆なコラージュを用いた大画面で迫ってきます。1980年代、画家転向か「Yokoo in Wonderland―横尾忠則の不思議の国」展 会場風景(第2章)「Yokoo in Wonderland―横尾忠則の不思議の国」展 会場風景(第1章)1818
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