KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年12月号
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1997年刊)を調べてみた。上下二巻、合わせて1500ページほどもある。といっても実は「目次」で調べただけなのだ。「顔」という詩はすぐに見つかった。窓から灯が出るように人は顔から 光がもれる二十人もこちらを向くと明るく まぶしいくらいだ(後略)   あれ?作意は似ているが違う。別の本を探す。2004年発行の『青をめざして』(編集工房ノア)。「顔」はあった。人が歩いてくる みんなカオをつけて。たった一行の詩。なぜかドキンとします。しかしおかしいなあ。なんでないのだろう?杉山先生は生涯に膨大な数の詩を作り、いろんなところに発表されているが、本に収録されなかったものもたくさんある。もしかしたら、谷本さんはそんな中から選んだのでは?と思ったが、そうだもう一冊、杉山先生の生前最後の詩集があった。『希望』(編集工房ノア・2011年刊)。この詩集で杉山先生は、現代詩人賞を受けられたのだが、東京での授賞式でご自身が朗読することになっており、その練習に励んでおられたと聞いた。だがその直前に97歳で急逝されてしまった。その詩集を繙いてみる。あらら、巻頭の表題詩「希望」に続いて、探していた「顔」が載っているではないか。「子供の画く太陽が…」。   ああ恥ずかしい。歳は取りたくないですねえ、と歳のせいにしておこう。■今村欣史(いまむら・きんじ)一九四三年兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。西宮芸術文化協会会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)ほか。■六車明峰(むぐるま・めいほう)一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・編集人。「半どんの会」会計。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。(実寸タテ10㎝ × ヨコ15㎝)107

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