KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年12月号
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KOBECCOオススメ 〜CINEMA〜『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』などで知られるヴィム・ヴェンダースが日本で撮り、カンヌ国際映画祭で高い評価を受け、米国アカデミー賞で日本代表作品として選出された話題作がようやく公開。待ってました!というファンも多いはず。主人公・平山(役所広司)の毎日を追うことから映画は始まる。仕事に出かけ、昼は外のベンチで、夜は同じ店で食事、同じ時間に銭湯に行く。休日も特別なことはない。最後までその生活が変わることはないのに、映画が終わる頃には平山の生活が違って見えてくる…と思う。そこが、ヴェンダースであり、役所広司であり、この映画なのかもしれない。平山がカセットテープで聴く60~70年代の音楽がいい。“聴く” 映画ともいえる。こんなふうに 生きていけたなら『PERFECT DAYS』(2023年 日本 124分)監督:ヴィム・ヴェンダース脚本:ヴィム・ヴェンダース、 高崎卓馬製作:柳井康治 出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、 麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和 製作:MASTER MIND 配給:ビターズ・エンドシネ・リーブル神戸にて12月22日(金)より上映。© 2023 MASTER MIND Ltd.perfectdays-movie.jpPERFECT DAYStext.田中奈都子『朝がくるとむなしくなる』(2022年 日本 76分)監督・脚本:石橋夕帆出演: 唐田えりか、芋生悠、石橋和磨、安倍乙、 中山雄斗、矢柴俊博配給:イーチタイム 元町映画館にて12月16日(土)より10日間上映。©Ippo代わり映えのしない毎日、朝がきてもスッキリとした気持ちで起きられない。会社を辞め、アルバイト先のコンビニではカスタマーハラスメントを受け、店長からやんわり人手不足の穴埋めを促される。人に迷惑をかけず、何も感じないように生きている希(唐田えりか)の日常は、学生時代の同級生、加奈子(芋生悠)と再会したことで、ほんの少し光が差しはじめるのだ。人間関係を築くのも、心のうちをさらけ出すのも、小さな積み重ねがあるからこそできるもの。彼女たちの感情の機微を丁寧に描く石橋監督の手腕と、俳優たちの演技が素晴らしい。若年層を使い捨てする社会の片隅で、「あなたは大丈夫」と背中を押す存在がどれだけ尊いことか。不器用な生き方をやさしく包み込むような、まさに宝物にしたい作品だ。わたしたちはひとりじゃない朝がくるとむなしくなる上映スケジュールはコチラ上映スケジュールはコチラtext.江口由美104

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