KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年11月号
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人って、案外そういう感じなのかもと、ある意味リアルに感じました。なので、国の威信をかけたあの建物で開催したことに、深い意味と面白さを感じます。小野 表慶館は日本初の本格的な美術館、建物そのものが重要文化財ですものね。横尾さんは自由だ!ご覧になっていかがでしたか?山本 1人の作家の、同じ時期に描かれた同じテーマの作品が100点並ぶって、普通は飽きなかった出来事です。平林 そこに今、描きたい絵で乗り込んでいった。権威のある場所でもまったく構えずに。その大胆さと挑戦する姿勢がかっこいいですよね。山本 しかもテーマは『寒山拾得』。捉え方は色々あると思いますが、僕は森鴎外の小説『寒山拾得』が頭にあって。“偉い人”とされる人物、寒山と拾得に会いに行ったら、ボロボロの服を着て、挨拶をしてもただゲタゲタ笑って、話もせずに逃げて行ってしまう。肩透かしを食らうんですよね。本当にすごい東博で展覧会をやるすごさ東京国立博物館(以後、東博)とはどんなところですか。美術館ではなく博物館での開催には意味があるのでしょうか?山本 東博は、いわば国のトップミュージアムで、国宝や重要文化財など、いにしえの時代からの選りすぐりの、残さなくてはいけないアートが集まっている場所です。何がすごいかというと、まだ生きている作家が、未発表の新作だけで展覧会をしたというところ。これは歴史上美術家横尾 忠則撮影:山田 ミユキ神戸で始まって 神戸で終る 〈番外編〉Tadanori Yokoo今月の横尾忠則『神戸で始まって神戸で終る』は、10月号に続き、番外編『横尾忠則 寒山百得』展についてお届けします。今回は、今エッセイでもおなじみの横尾忠則現代美術館学芸員、山本淳夫さん、平林恵さん、小野尚子さんにお話いただきました。日々横尾作品と向き合い、展覧会を企画する御三方だからこそ話せる『寒山百得』。お楽しみください。1414

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