嘘さえも信じてくれた父が逝くお父さん、あの世で泣いちゃいますね。というより、わたしが泣いてしまう。奈央さんと同じ年頃の娘がいるので。まだかゆい肩甲骨の2ミリ上「2ミリ」、心憎い、この微妙な数値。猫じゃらし無口な人に振ってみるそうだ、あの人に試してみよう。集合の笛に飛び散る雀たち一瞬のチャンス。シャッタースピードは?閉店後ハードロックを聴く大将わたしは喫茶店マスターの時、閉店後、有線放送のチャンネルをクラシックからブルーグラスに変えていた。この手紙結ぶ言葉を探してるそうそう、誰もが経験すること。この原稿の結びはどうしようか。父の靴ちいさき指がみがく朝泣かさないで。鼻歌でギリギリ嘘をはぐらかす口笛では無理か。人生の機微。幼な子の柩に眠るきりんさん「きりんさん」の目に涙。似なかったところばかりが欲しくなる似なくていいところが似ちゃったね。きっちりと時実新子さんの命脈を継いでおられる。つまらないダジャレ川柳や、わけの分からない言葉を組み合わせただけの深みのない川柳が世の中に出回っているが、このような文学の香りする句こそ川柳界の主流にならないといけないと、門外漢ながらわたしは思う。新子さんも月から拍手を送っておられることだろう。注「月の子忌」新子さんの命日(実寸タテ23㎝ × ヨコ4.2㎝)■今村欣史(いまむら・きんじ)一九四三年兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。西宮芸術文化協会会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)ほか。■六車明峰(むぐるま・めいほう)一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・編集人。「半どんの会」会計。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。119
元のページ ../index.html#119