KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年11月号
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巡り広がります。多発性骨髄腫は主に骨の中で腫瘍細胞が増え、骨が溶けて骨折したり、腎臓が悪くなったりします。―治療法は?内科的な抗がん剤を使う治療が主ですが、抗がん剤で治し切れない場合は骨髄移植という方法を取ります。また、他の診療科と連携を取り、緩和ケアや手術、放射線治療への橋渡しの役目も担っています。―骨髄移植はどんな場合、どういった方法で行われるのですか。白血病や悪性リンパ腫といった悪性腫瘍をはじめ、血球を全く作れなくなる再生不良性貧血といった命に関わる疾患で適用される場合が多いです。白血球の血液型「HLA」が一致するドナーさんの骨髄から抜き出した骨髄液を患者さんに点滴で注入(移植)するのが骨髄移植です。この他には、ドナーさんに白血球を増やす薬剤を投与し、血液中に流れ出した造血幹細胞を取り出して患者さんに移植する末梢血幹細胞移植や臍帯血に存在する造血幹細胞を移植するケースもあります。ドナーさんが持つ免疫力が働き、完治に導ける可能性を持った治療法です。―HLAはどの程度の割合で一致するのですか。兄弟姉妹であれば理論上は25パーセントの割合で一致します。近親者の中でドナーが見つからなければ骨髄バンクや臍帯血バンクに登録して適切なドナーを待ちます。また、ある程度までがん細胞をやっつけた段階で患者さん自身の造血幹細胞を取り出して凍結保存し、副作用のリスクが高い強めの化学療法(大量療法)を行った後、元に戻す自家移植という方法を選択する場合もあります。―何が原因で血球の〝工場〟が壊れたり攻撃されたりするのですか。予防はできるのですか。ぎる病気としては多血症があります。白血球は異物の侵入から体を守る働きを持ちます。感染症やアレルギーなどに反応して増減するので、増えたからといって必ずしも血液の病気というわけではありません。白血球が腫瘍細胞化して増えるのが白血病です。血小板には血を止める働きがあり、減る病気として特発性血小板減少性紫斑病、増える病気として本態性血小板血症などがあります。―血液のがんはどういうものですか。白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫が主な血液のがんです。白血病は主に骨髄の中で腫瘍細胞である白血病細胞が増えて正常な血球が作れなくなってしまいます。腫瘍細胞が血液中に流れ出て全身を巡るので、一般的ながん細胞が全身に広がる「ステージ4」という概念はありません。悪性リンパ腫は主にリンパ節でリンパ球の腫瘍細胞が増え、リンパ液が流れる管を通って全身を110

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