重にも画面合成して仕上げる未知の仕事で、最終的にニューヨークのスタジオで合成撮影するという訳だった。ビデオ技術のことはビデオ屋さんに任せて、時間も製作費もあるのをいいことに、ボクは親友のカメラマンと夜の街に出た。当時は「アイ・ラブ・ニューヨーク」の観光キャンペーンのお蔭か、治安も悪くなく、街の人々も長閑だった。「これ、デ・ニーロ主演のうわさのやつ。カンボジア大虐殺の『キ1987年の初め、ボクはニューヨークにいた。次から次へと撮ってきた映画仕事が途切れてしまい、新しい企画を考える気もしなくて、景気に浮かれる東京からしばらく離れてみたい、そんな気分でいた頃だ。でも、まさかマンハッタンの摩天楼の下まで来るとは思わなかった。実は、広告代理店から依頼された製菓メーカーのプリンのCM撮影で、まだ開発途上の“ハイビジョンカメラ”を使って何リング・フィールド』(85年)の監督のや」とボクが言うと、親友も大きく頷いたので、お上りさんよろしく、ブロードウェイの映画館に入った。とんでもないスケール感の『ミッション』(87年)だった。18世紀、スペインの植民地の南米奥地が舞台で、キリスト教の宣教師と共に、デ・ニーロ扮する罪深き奴隷商人が改悛して、密林に住むインディオらに布教していく話だ。字幕がなくて細部は解らなかったが、井筒 和幸映画を かんがえるvol.31PROFILE井筒 和幸1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm映画『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』セルDVD発売中。52
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