KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年10月号
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残ってるのに、邦題ではどっか行っちゃった(笑)。でもストーリーは小説に忠実で、アラン・ドロンとマリアンヌ・フェイスフルがよかった。meme タイトルもそうですけど、映画ならポスター、レコードならジャケットも記憶に残りますね。松 本 『ゆでめん』『風街ろまん』とか、飾ってるって話はよく聞くね。 絵とかレコードジャケットも、景色と同じで記憶に染み込む。だから、部屋はいつもキレイにして、目に触れるところには好きなものを飾るといいと思う。僕はそうしてる。好きな絵を見てたら気分がいいから。 ジャケ買い、たくさんしたよ。昔は銀座と渋谷のヤマハしか輸入版のレコードが買える店はなかった。60年代はまだオタクっぽいレコード屋はなくて、細野さんとか僕が通ったパイド・パイパー・ハウス(1975︲1989)が青山にできたのは、ずっと後のこと。 あるとき銀座のヤマハに行ったら、「松本くん、いいレコードがあるよ」って呼ばれて。「キミに売ってあげる」って。今思えば、ずいぶん上から目線だよね(笑)。「昨日入荷したばかり。うちが1番早いから、日本で1番にキミが手にすることになる」って。それは価値あるなと思って買ったんだけど。それがレッド・ツェッペリン。聴いたらすごくかっこいい。 ちょうどその頃、バンドでテレビ出演が決まって、誰もまだ演ってないツェッペリンをやろうってことになった。「松本、これコピーしろ」って細野さんに言われたのが『Good Times Bad Times』。「いいよ」って言ってから、よぉく聴いてみたら、めちゃくちゃ難しいの、バスドラが(笑)。できるか!と思ったけど、必死にやりました。ボンゾ(ジョン・ボーナム)のドラムは難しい。でもかっこいいんだよ。「できない」なんて言わない(笑) アルバムを手にしたおかげで、ツェッペリンのコピーをテレビで演奏したのも、僕たちが日本で1番だと思う。meme 「この子に聴かせたい」と思わせる松本さんもすごいし、ヤマハの方も優秀ですよね。 デイヴィット・ホックニー展(東京都現代美術館)に行かれてましたね。お好きなんですか。松 本 40年くらい前、仲のいい画廊の人が「珍しい絵が入ってきたよ」と見せてくれたのがホックニーだったの。なんか懐かしくなって行ってみた。すごくよかったよ。観に行った方がいい。86歳のおじいさんなんだけど、常に新しいことに挑戦してる。 絵を見るのは好きなんだと思う。北青山にある画廊には、時々遊びに行ってた。今はワタリウムっていう美術館になってるよ。南青山に住んでたから、あのあたりに行きたくなっちゃうのもあるだろうけど。すごく忙しい時期だったけど、あの時間は僕にとって必要な時間だったんだろうね。……ちょっと、外、歩こうか。23

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