建築工事では、節目ごとに儀式が行われます。工事はじめに行う地じちんさい鎮祭、柱を立てるときに行う立りっちゅうしき柱式、棟むなぎ木を上げたときに行う上じょうとうしき棟式、完成したときに行う竣工式など。社寺や住宅のみならず、最先端のハイテクビルディングでも、工事の安全を祈願して儀式は行われています。このような建築儀式は、現代では神職が行うことが多くなっていますが、本来は大工棟梁が行うものでした。棟梁自身が式典の準備や進行を把握し、儀式が始まれば正式な装束を身に着け、専用の道具を用いて所作を振る舞い、神々に祈りを捧げます。またものづくりを自身で行えるため、上棟式に用いる棟むなふだ札(写真)や幣へいぐし串なども製作していました。それゆえに古くから続く大工棟梁家には蒔まきえ絵や錺かざり金具に彩られた綺羅びやかな儀式道具が残されています。有名なのは幕府大棟梁甲こうら良家が日光東照宮に奉納した儀式道具で本殿の付属品として国宝に祈りのかたち棟札常設展B1Fの「棟梁に学ぶ」の展示―建築儀式とその道具竹中大工道具館邂逅―時空を超えて第一回16
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