KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年10月号
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子、本居春庭の評伝文学『やちまた』を書くために何度も訪れておられる。松阪市のそこへわたしも行ってみたかったのだ。ここまで書いてきて、そうだ、足立先生が松阪を語るラジオ番組の録音があったはずと思い出した。NHK第二放送「一冊の本」。梶井基次郎の小説「城のある町にて」をめぐる文学談義。ここでいう「城」が松阪城址で、記念館はそこにある。足立先生独特の早口が懐かしい。この一年後に先生は72歳でお亡くなりになるのだが。話を『ぼくもいくさに…』に戻す。20ページほどにわたって、足立巻一先生と桑島玄二さん(わたしも何度か書簡を交わしたことがある詩人・評伝作家)の話が詳しく出ている。ほかにも神戸の詩人、たかとう匡子さんまで登場している。そして極めつけは、解説を書いておられる出久根達郎さん。わたしの知る人がこんなにも。その本をこれまで知らなかったなんて恥ずかしい。森文子さん、いい本を紹介してくださってありがとうございます。感動のうちに読み終えたが、足立先生や桑島玄二さんが竹内のことを書いた時より、新しい重要な資料も見つかっており、より充実したものになっている。ここで内容を詳細に書く余裕はないので、出久根さんの解説文から一部をお借りしよう。《竹内浩三が、「骨のうたう」で脚光を浴びたことも、私は不幸な出発だったと思う。「戦死やあわれ/兵隊の死ぬるや あわれ」で、反戦詩の代表作とレッテルを貼られた。竹内は反戦詩人とみなされ、そのように読まれた。間違っているわけではなく、悪いのではないけれど、読者を狭めた、という気がしないでもない。竹内浩三が「青春の詩人」と見られたなら、もう少し若い人たちに受け入れられたのではないか。》そう、わたしも思う。竹内浩三は「青春の詩人」だったと。(実寸タテ15㎝ × ヨコ10.5㎝)■今村欣史(いまむら・きんじ)一九四三年兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。西宮芸術文化協会会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)ほか。■六車明峰(むぐるま・めいほう)一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・編集人。「半どんの会」会計。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。125

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