KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年10月号
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れられないと思います。─患者に対するメリットの面からはいかがですか。木村 フランスの医師組合が指摘するように、患者の医療機関選択の自由をかかりつけ医制度が侵害しているという根強い意見があり、各専門医を自由に受診できる日本においても患者の権利侵害となる可能性があります。また、フランスのかかりつけ医では検査機器をほとんど装備していませんが、日本の診療所では検査機器が多く導入されており、診療内容も大きく異なります。フランスでは一般医は専門医より低い診療費で診療を行っていますが、日本では専門医が低い診療費でかかりつけ医として診療を行っているので、フランスのかかりつけ医制度を導入しても患者の自己負担額の削減にはつながらないでしょう。つまり、フランスのかかりつけ医制度を日本に導入したところで患者に対するメリットが乏しく、将来的に参考にできる部分はあるものの、短期的にはかなり無理があるのではないでしょうか。師の比率の増加と働き方改善、過疎地での開業忌避などさまざまな要因があるといわれます。─フランスのかかりつけ医制度を日本に導入することは可能でしょうか。木村 フランスは社会保険が原則で国民皆保険を指向し、もともと患者が自由に医療機関を選べるフリーアクセスの国です。しかも医師団体の力がそれなりに強い、官僚の力が強いなど日本と共通する点は多く、導入するには障壁が少ないとも思え、重複受診や重複処方の防止、受診の適正化には効果があるでしょう。しかし一方で、フランスでは一般医の割合が高く、専門医の割合が高い我が国と大きく異なります。また、かかりつけ医を含めた専門医養成の枠組みがあるフランスの制度を教育制度が整備されていない日本に導入することは困難で、患者のリテラシーの高い我が国ではかかりつけ医と専門医の診療所間で経済的インセンティブを導入することも簡単には受け入合は7割+1ユーロに増えるという保険償還上のペナルティーがあります(図2)。ただし、これも補足保険により自己負担部分が償還されますのでその効果は薄いです。─フランスのかかりつけ医制度にはどんな課題がありますか。木村 まず、かかりつけ医を持たない「かかりつけ医難民」とよばれる国民が増え、2022年時点でフランス人口の8.6%に相当し、特に医療過疎地では深刻です。また、かかりつけ医の受診が困難なため、本来は入院機能を担うはずの大病院の救急外来へと行き場のない中軽症患者が大量に駆け込むという事態も慢性化しています。これらの問題の背景には、団塊の世代医師の高齢化とリタイアによる現役医師の大量消失、国民の高齢化による医療需要増、長年の国による医学生数制限、ゲートキーパーの診療報酬凍結により同等学歴の他業種給与水準と比較し報酬が低くかかりつけ医そのものの魅力と現場の士気の低下、女性医111

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