問屋の次男」を主人公に戦前の大阪の商家の日常を描いた作品『廻船問屋の中ぼんさん』(鹿砦社)を刊行したことを記念し、幕末~近代の阪神間の歴史をテーマにしたレクチャーとシンポジウムで、西宮や芦屋の住宅都市化や阪神間モダニズムについて理解を深める機会となった。第一部では芦屋市教育委員会学芸員の竹村忠洋さんが「住宅都市芦屋かいわいの近代」と題して講演、信頼性のある史料や統計をベースに近代化によって芦屋が農村から住宅都市へと変貌し、そこに阪神間モダニズムの文化が生まれたという歴史をわかりやすく解説しただけでなく、絵はがきなど貴重な画像をスクリーンに映し聴衆をタイムスリップに誘った。続いて上念さんが壇上に立兵庫・神戸のヒストリアンこと田辺眞人先生がプロデュースした企画、「阪神間の近代と商家の生活 『廻船問屋の中ぼんさん』をめぐって」が8月23日にルネサンスクラシックス芦屋ルナ・ホールで開催された。これは、宝塚市在住の上念素子さんが、祖父である「廻船ち、出版に至るまでの経緯や物語のあらすじ、祖父の人生とその時代背景について、心温まるエピソードや古い写真を交えながらおだやかに語った。家族の歴史を伝える意義についても触れた上念さんのお話に、歴史が身近なところにあるということを再確認した人も多いだろう。第二部のパネルディスカッションでは、竹村さん、上念さん、田辺先生、そして阪神間の文学に詳しい西宮芦屋研究所の蓮沼純一さんが、阪神間の近代とそこに芽生えたモダニズム文化について語り合った。『廻船問屋の中ぼんさん』について、蓮沼さんは西宮や芦屋のお屋敷での粋な暮らしぶりがリアルに描かれて面白いと語り、竹村さんは阪神間の近代化のポイントをしっかり抑えていると高く評価。田辺先生は総今回の企画をプロデュースした田辺眞人先生『廻船問屋の中ぼんさん』刊行記念の催し「阪神間の近代と商家の生活」を開催ルネサンスクラシックス芦屋ルナ・ホールにて106
元のページ ../index.html#106