KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年9月号
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高エネルギー加速器研究機構の多田と申します。このコラムも三回目になります。これまでは僕自身についてお話しして参りましたが、今回からはいよいよ物理学についてお話しして参りましょう。僕が講演で自分の専門分野の話をする際には、必ずと言っていいほど、「素粒子とは何か」から説明しなければなりません。それほどに、一般の方々からは縁遠い分野です。ところが、現実の自然界では、あらゆるもの、例えばみなさんの身体も、素粒子からできています。そういう意味では、実はみなさんに最も縁のあるものでもあります。自然界にあるものはどういう構造なのか、自然現象はどのようにして起こるのか、それらを調べる学問が自然科学です。その自然科学の分野は多岐多様に亘りますが、今回は、その自然界を構成する階層で分けてみることとします。この世で最も大きな階層は「宇宙」です。宇宙は、一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇メーターほどあります。大き過ぎて、まるで実感が湧かないですよね。その宇宙は、「銀河」が集まってできています。銀河の大きさは一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇メーターほどです。こういったものを扱う学問が宇宙物理学です。銀河は、無数の恒星からできています。ときには、この恒星は多田先生!ニュートリノと 宇宙のはじまり教えて 連載〜第3回〜 素粒子とは?宇宙のはじまりとは―。最初に存在した最も基本的な物質、つまり素粒子を組み上げて恒星や銀河系をつくり、宇宙は出来上がったと考えられています。素粒子のひとつニュートリノを研究することで、なぜ宇宙の始まりが解明できるのか、この連載で素粒子物理学者の多田将先生に教えていただきます。66

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