和国のチェルノブイリ原発で起きた大爆発事故のニュースが伝えられたが、今一つ実情が判らず、日本政府はソ連政府が情報を隠していると非難し、庶民たちは放射能の雨が降るぞ、輸入品のパスタの値段が上がるぞと騒いでいた。ボクら制作チームはそんな騒ぎもよそに意気消沈するばかりだった。「ゴールデンウィーク」というのは'50年代初め、どこかの映画会社が「この連休は大い1986年の4月下旬から、ゴールデンウィーク用として、『犬死にせしもの』は岡本喜八監督の『ジャズ大名』と二本立てで公開されたが、お客が不入りのまま終わってしまった。ボクの作品は若い客層を狙っていたが、なにせ世の中は軽佻浮薄な時代。敗戦直後に元日本兵が海賊になって、戦争成金の悪党と戦う、そんな話には全く興味がなかったようだ。ちょうどこの頃、旧ソ連邦のウクライナ共に客を入れて稼ぐ時だ」と考えついた宣伝用語だ。ボクの作品は製作費も予算オーバーしていたし、製作会社の重役はさぞかし頭が痛かったことだろう。おまけに、作品の評判も良くなくて、しばらく、ボクはものを考える気がしなくて出歩く気もしなかった。確か、「物語が冗漫で予定調和、台詞も聞きとりにくい」と新聞の映画評に書かれて、その記事だけ破って丸めて捨てたのを覚えている。何井筒 和幸映画を かんがえるvol.30PROFILE井筒 和幸1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm映画『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』セルDVD発売中。48
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