KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年9月号
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僕が描く寒山拾得は、寒山が常に携帯する巻物をトイレットペーパーに変え、拾得の箒を電気掃除機に変えて、絵の中に登場させている。僕にとってはこの二人は自由の象徴である。つまり常識の範疇をはるかに越え、生と死を超克した何でもありの存在なのである。絵の表現さえどうでもいいという二人の精神を体現することによって、自由のキャパシティを拡張する手段とした。僕の絵の中では寒山拾得は全ての制約から自由であるために時代も場所も無視した存在として、中国人であると同時に日本人、西洋人、時にはアフリカ人にもなって、異次元の存在として絵の中を暴れまくるキャラクターに変身させ、シルベスター・スタローンのランボーになったり、ドン・キホーテやロビンソン・クルーソーにも変身させ、寒山拾得にはタブーがないことを証明した。と同時に美術家も自由で限界のない世界で生きなければならないということを暗示させる必要があった。話は変わるが9月12日より、東京国立博物館で『横尾忠則 『Forward to the Past 横尾忠則 寒山拾得への道』展 会場風景2020

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