KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年8月号
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一定の割合で起こってしまいます。今は明らかにリンパ節転移を認める場合を除き、乳腺から一番初めにつながっているセンチネルリンパ節だけを摘出して転移を確認し、余分な切除を減らしています。女性にとって精神的ダメージが大きな手術ですから、形成外科の先生方と協力して乳房再建手術を同時に行うこともあります。―乳房再建手術とは?必ず行われるのですか。人工物や自身の組織を使って再建する手術です。最近多いのはお腹を切って脂肪を取り出し乳房のボリュームを再現する方法です。がんの手術後すぐに化学療法や放射線治療に移行する必要がある患者さんの場合はそちらの治療を優先します。また脂肪吸引とは違い大きな手術ですから、患者さんの年齢や状態、意志を尊重しながら方針を決めます。―乳がんは予防できるのですか。出産や授乳との関係はあるのですか。食生活や過度な飲酒が関係するとはいえ、それらを改善したからといって乳がんにならないというわけではありません。出産や授乳を経験した人の発症が少ないという傾向はありますが、決してそれだけが大きく関係するものではありません。―がんには遺伝によるものもあるといわれますが、乳がんは?遺伝的な素因によってがんが発生する場合、一般的に若くしてがんになる、複数のがんができやすい、また血縁者に特定のがんの発症が多いなど特徴的です。乳がん・卵巣がんについては特定の遺伝子が分かっているので遺伝子検査で判断できます。―遺伝子検査は誰でも受けられるのですか。遺伝カウンセリングを受けてメリットとデメリットがあることを理解してから受けるもので、費用もかかります。神大病院では以前から遺伝子診療部で遺伝カウンセリングや遺伝学的検査を実施してきました。しかし薬には副作用もあり、誰でもどんな場合でも使うことが最善の治療とは言い切れません。患者さんそれぞれに対して過不足のない治療を行うことで再発のリスクを最低限に、なおかつ余分な治療を受ける必要なく完治を目指します。―方針は何を基準にして決めるのですか。以前はがんの進行状況によって治療方針を決めていました。最近はそれだけでなく、がん組織を調べて5つのタイプに分類し、どんな抗がん剤が効果的なのか、女性ホルモンを抑える薬が効果的なのか、手術とどう組み合わせるのかなどを判断します。―外科手術では乳腺をどの程度まで切除するのですか。がんを残すことなく取り除くことが大前提です。しこりが広がっていなければ小さく、広がっていれば全部取ることもあります。昔はリンパへの転移を抑えるために早期癌でも脇のリンパ節まで切除していたので術後は腕がむくむなどの後遺症が98

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