KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年8月号
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なっているので単純な比較はできませんが、イギリスでは税方式かつ国営の医療システムのもと、ファーストコンタクトはGP(General Practitioner)という家庭医に限られています。GPは1948年に制度化されており、長い歴史があるのですよ。ドイツでは1924年に専門医制度が確立し、家庭医と一般医は明確に区分されています。フリーアクセスは保障されていますが、家庭医中心診療が一般化し、ファーストコンタクトは家庭医です。フランスでは家庭医の登録が法律で義務付けられていますが、家庭医への受診は義務ではなく、フリーアクセスも法律で保障されています。ただし、専門医へ直接受診すると自己負担額は増えます。─どの国でも紆余曲折を経て、いまの医療制度ができているのですね。多田 社会心理学の古典であるギュスターヴ・ル・ボンの『群衆心理』に「制度は結果バランスが問題になっていたこと、サムス大佐自身が一般医で専門医に対しコンプレックスを抱いていたことも背景にあるようです。主権回復後、1956年度版の『厚生白書』では「家庭医は専門医制度においてとても大切である」と触れられています。GHQ改革によるインターン制度は1968年の学園紛争で廃止になり、その後30年以上の空白期間を経て専門分化が進み、現在のように臓器別・病気別の専門医に直接かかるのが当たり前になっていきました。つまり、日本独自の進化を遂げてきた訳です。─家庭医とよばれていたものが、なぜかかりつけ医とよばれるようになったのですか。多田 1985年に設置された「家庭医に関する懇談会」の影響があります。これは1983年当時の厚生省保険局長、吉村仁氏が発表した「医療費亡国論」に基づいて招集され、当時の日本医師会と激しく対立しました。以降、家庭医という用語自体が禁句となり、1992年に就任した村瀬敏郎日本医師会会長が「かかりつけ医」という用語を使用するように提唱し、それが定着していったのです。─本来の家庭医とはどのようなものなのでしょうか。多田 世界家庭医機構(WONCA)ヨーロッパの定義ですが、例えば「全ての健康問題においてファーストコンタクトとなること、人間中心のアプローチや患者の自己効力を引き出すこと」とされており、家庭医自身の人格や高い教養に強みがあることが伺えます。また「他の専門医にない“ユニークな診療プロセス”を持ち、健康問題を身体的、心理的、社会的、文化的、そして実存的次元で扱う」とありますので、特別な訓練が必要となります。─家庭医もひとつの専門領域なのですね。海外での家庭医制度はどのような状況ですか。多田 医療制度の根本が異93

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