高エネルギー加速器研究機構の多田と申します。前号より本欄にてお世話になっております。同機構の中で、僕は「素粒子原子核研究所」という部署に所属しています。そして、僕の専門も素粒子物理学です。この、世のほとんどのみなさんには馴染みのない分野の話を、これから何回かにわたってお話しすることにしますが、その前に、今回は、僕がなぜその分野に進んだのか、ということについてお話ししたいと思います。前回は僕の幼少期の話でしたから、その続きからです。僕は関西の出身で(生まれは大阪府摂津市)、小中学校は地元の普通の公立校に通っていました。高校に進学するにあたり、僕は大阪教育大学教育学部附属高等学校池田校舎を選びました。今はそうでもないらしいですが、当時は、北大阪一の進学校でした。たとえば、高校三年生のときの僕のクラスの名簿を見ると、男子の半分が京都大学に進学しています。本誌の読者の方々のお住まいの地域(神戸・阪神)だと、灘高校や甲陽学院など、日本屈指の進学校がありますが、そもそも僕には私立高校という選択肢はありませんでした。多田家にはそんな経済的な余裕がなかったからです。大教大池田は国立で、授業料はほぼ無料でしたから、裕福な家庭でなく進学校に行きたいとなると、選択肢なしでここになるのです。また、当時僕が住んでいたのは阪神の東端の川西市というところでしたから、池田市はその隣で、「最も近い進学校」であったことも理由のひとつです。満員電車で揉まれる辛い朝の時間も、十五分で済みました。それ多田先生!ニュートリノと 宇宙のはじまり教えて 連載〜第2回〜 素粒子物理学を志した理わけ由宇宙のはじまりとは―。最初に存在した最も基本的な物質、つまり素粒子を組み上げて恒星や銀河系をつくり、宇宙は出来上がったと考えられています。素粒子のひとつニュートリノを研究することで、なぜ宇宙の始まりが解明できるのか、この連載で素粒子物理学者の多田将先生に教えていただきます。62
元のページ ../index.html#62