を中断して聞いてるの。パン早く成形したいのに話が終わらない時もあって、焦ってくるんだけどね(笑)。でもパンよりお喋りをとりたい。なんか…大手のパン屋との違いってそういうところでしょ。大下 そうですね。でも成形も大事ですよ(笑)。 お客さん、来てくれますもんね。僕らのところにわざわざ。顔が見える、直接話せるのって幸せだなって感じます。楠田 この人たちのためにパン作ってんだな、ってね。大下 パン屋さんって行きます?楠田 行くよ。パン屋、好きだもん。イスズベーカリーのトレロンが好きなんですよ。大下 あ、僕も。っていうか、みんな好きでしょトレロン(笑)。〝神戸の〟イスズベーカリーだからね。楠田 今、3代目ですもんね。新しいパンもどんどん出るけど、味はブレない。守るって難しいことだと思う。進化し過ぎないイスズでいてほしいよね。大下 クスパンの進化は?楠田 進化はしなくちゃいけないと思ってます。お客さんの求めているパンをおいしく作れるように。今年、10数年ぶりにコンテストに出ました。国際大会は年齢制限があって出られないんだけど、でも『BAKERY JAPAN CUP』は還暦の僕でもOK。参加者で最年長。これが僕の進化です。大下 コンテストって体も気持ちも、正直しんどい。普通の60歳は出たくないですよ(笑)。高く評価してもらえたら嬉しいけど。でも楠田さんの目的はそこじゃないでしょ。楠田 そりゃあ僕だって勝ちにいってますよ。優勝したい。でもそうだね、それがメインじゃないね。コンテストの準備も当日もずっと幸せ。決勝に残って、みんなの前で作ってる時はサイコーに気持ちよかった。「この時間がずっと続いたらいいな~」って思ってた。それと挑戦する自分に酔う自分もいるの。「今オレ、カッコイイ」って(笑)大下 ミュージシャンみたい(笑)。やっぱり、生き様ですね。楠田 パン屋という仕事が好きなんですよ。お客さんが「おはよ」って言ってくれて、なんか色々喋ってくれて、小さい子が手振ってくれたり、グータッチしてくれる(笑)。お客さん来てくれなかったら、パンが作れないですもん。ふつうのね、町のパン屋でいたいです。大下 垂水と御影の「ふつうにおいしい、ふつうのパン屋」でいましょう。43
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