KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年8月号
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実はもう、40年以上の歴史があります。一番分かりやすい例を挙げると、種子島宇宙センター(JAXA)があります。H2ロケットやH3ロケットの燃料となる液化水素を貯めておくタンクは、国内最大級のものですが、実は川崎重工業製なんです。また、マイナス162℃のLNGを運ぶ船の建造もずっと行ってきました。つまり、個々の技術で見ると既に持っている技術なんですが、今回は、サプライチェーンとして「つくる、はこぶ・ためる、つかう」ということを繋げてやっていこうと進めている段階なんです。いま話題にも出ましたが、およそ50年前にLNGに着目し、その普及を担ってきたのも川崎重工業でした。LNGのことを振り返ってみると、当時はまだエネルギーと言えば石油などが主でした。そして、石油に比べて高かった。なので、なぜそんな高いものを使わないといけないのかという声もあったんです。しかし、普及して気体から液体に変わり、体積が800分の1に減少します。体積を減らすことで一回でより多くの水素を流通できるようになります。しかし、船上に液化水素のタンクを搭載するのは世界初となる技術。現在流通している液化天然ガス(LNG)よりさらに90℃ほど低い温度で安定させないといけないところに難しさがあるのですが、無事成功しました。船名に「すいそ」という日本語を用いたことにも意味があります。マンガやカラオケという日本語が世界標準になったように、「すいそ」という日本語も、我々の技術とともに世界に広めたいという想いを込めて命名しました。2030年には、いまの船のおよそ3倍の長さとなる全長300m級で、一度で128倍の約1万トンもの液化水素の輸送を可能にする大型の運搬船を実用化する予定です。川崎重工業が水素に着目した経緯を教えて下さい。2020年にカーボンニュートラル宣言がありましたが、我々は、それ以前から水素事業に乗り出しています。サプライチェーン構想を外部に発表したのは、2010年の経営計画が最初。日本のような資源に乏しい国がエネルギー安全確保を担保しながら、地球環境保護のためにCO2排出削減を実現していくために、製造時や使用時にCO2を大気中に出さない、CO2フリー水素の製造から利用まで一気通貫で開発するというコンセプトを提案しました。LNG事業で培った技術に加えて、液化水素貯蔵タンクなど液化水素の取り扱い技術と経験を活かせると考えました。以前から水素貯蔵タンクや水素運搬車は作られていたんですね。目指すは水素をエネルギーとして当たり前に使う社会36

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