KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年8月号
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えるんですよ。家でCDを聴くのではなく、わざわざ来てくださるのはなぜか。コンサートも舞台芸術なんですよね。生きた人間がいて指揮者がいて演奏して、音の物語を伝える。言葉じゃなく理屈じゃなく、感情で感情を伝える。心のやり取りです。そして素晴らしいことに誰も傷つかない。だから聴く人にも、理解しようとせず感じてほしい。そして、終わったから拍手しとこ、じゃなく、何かを感じたら舞台の人に拍手で知らせてほしい。Q.海外初披露の新プログラムです。今回演奏する曲目を教えてください。『シンドラーのリスト』は、「あの曲ね!」とすぐにメロディが浮かびました。映画を観た人の心に残っている曲だと思うのでプレッシャーもありますけど、楽しみの方が大きいです。『SAYURI』『遥かなる大地』は、映画としては馴染み楽しかったですよ。「これでいいのかな」と思いましたけど(笑)。どんな音楽も、演奏の役割は大きいと思っています。私はいい演奏をして、お客さんに「いい曲だな」と思ってもらうのが務め。つまらない演奏をしたら、「この曲は苦手」ってお客さんが離れてしまう。魅力的な曲にするのも退屈な曲にするのも演奏者次第だと思うんです。クラシックに限らず。Q.音楽を作るのは、作曲家だけではないということ?演奏して、聴いてもらって知ってもらう。さらに言うと好きになってもらう。どんな名曲でも、演奏しないと曲として残らないですよね。演奏されない曲がほとんどですけど、私は演奏さえよければ名曲になる“隠れた名曲”をいくつも知っています。私だけじゃないですね、音楽を勉強していたらそれだけ多くの曲に出会っているわけですから。現在頻繁に演奏されている人気曲だけでなく、多くの人に「いいな」と思ってもらえる“名曲”を増やしたいと思っています。そうしないと、今、演奏家ができることはなくなってしまう。Q.“隠れた名曲”、聴きに行きます。ぜひ。好き嫌いはご自由に感じていただいていいんです。「いい曲だから」って押し付けたい訳じゃない。自由な感覚と感情を解放する場としてクラシックの演奏会を使ってほしい。勉強会みたいに聴きにくるんじゃなくて、もうちょっとフレキシブルになれたら、日本人の心の機微にクラシックはピッタリはまると思うんです。なぜコンサートをするのか考ボストン・ポップスとの共演に思うこと28

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