KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年8月号
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この工程は数寄屋の土壁全般に通じます。現存最古の塗壁が遺る大徳寺玉ぎょくりんいん林院蓑さ庵あんの模型の床の間には、本物と同じ土壁の仕様を再現しています。下地となる荒壁に土の塊を混ぜ、その凹凸をのこしながら長い稲藁で模様づけた「投げスサ」と呼ばれる技法です。土の特性を知りぬいた匠だけがなし得る高度な意匠となっています。そして、コーナーの奥に「火灯窓付蛍壁」が展示されています。火灯窓は、古来中国から伝来し、広く寺院建築に採用された形式です。文字通り火灯の形をそのまま窓に転用するものです。通常木枠でつくりますが、ここでは「黒磨き」と呼ばれる墨を混ぜた漆喰を丹念に鏝で磨く技法で限りなく薄く仕上げ、炎の形だけを浮かび上げています。そして、その中に真紅に燃える火を別の質感をもった「赤磨き」で表現しています。一塗りで数ミリというわずかな塗り厚の中に数々の技を織り込む日本独自の土壁の世界をお楽しみください。(主任学芸員・西山マルセーロ)神戸市中央区熊内町7-5-1Tel.078-242-0216休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)開館時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)https://www.dougukan.jp/ 左上:火灯窓付蛍壁右上:茶室内床の間「投げスサ」工程模型右下:蓑庵床の間「投げスサ」仕上TAKENAKA CARPENTRY TOOLS MUSEUM竹中大工道具館13

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