KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年8月号
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今村 欣史書 ・ 六車明峰連載エッセイ/喫茶店の書斎から   ヒイジイサン店の本棚にズラリと並んでいるシリーズ本がある。『ひょうご現代詩集』16冊。兵庫県現代詩協会が発行する会員のアンソロジーだ。その中の最新号、16集(2023年3月発行)に興味深い詩が載っていた。恥ずかしながらわたしの作品も掲載されているのだが、これは明石市の八田光代さんの詩。ご本人のお許しを得て紹介する。    ヒイジイサン  野口雨情作詩の童謡  「赤い靴」の  一番の歌詞   赤い靴はいてた   女の子   異人さんに連れられて   行っちゃった この中の/異人さんというところを/ヒイジイサンと覚えていた子がいて/ずっとそう歌ってた と/最近は/異人さんは死語になったのか/長寿社会になって/ヒイジイサンが/そこここに大勢いて/ヒイジイサンの方が/イジンサンより/一般的になったのか  我がつれあいは  八十五歳  もうすぐ  ヒイジイサンに  なるこれを読んでハタと思い当る話があった。わたしの妻が言っていたこと。やはり童謡で「船頭さん」(竹内俊子作詞)を子どものころ間違って歌っていたのだと。童謡の歌詞の思い違いはよくあることで、「うさぎ追いし」を「うさぎ美味し」。「どんぐりコロコロどんぶりこ」を「…どんぐりこ」。「ゆきやこんこ」を「ゆきやこんこん」など枚挙にいとまがない。そこで妻の「船頭さん」だが、「年はとってもお船をこぐ時は元気いっぱいろがしなる」とあるところを、「…元気いっぱいこがしなる」と歌っていたのだと。「櫓ろがしなる」を「漕こがしなる」と。106

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