KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年7月号
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KOBECCOオススメ 〜CINEMA〜『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』で知られる監督が今回描いたのはシモーヌ・ヴェイユ。前作の2人よりその名を知る人は少ないかもしれないけれど、フランスの偉人・人気ランキングでは常に上位にあがる。この作品は、自伝執筆のため過去を振り返るシモーヌの目線で彼女の人生を辿る。シモーヌは1927年にユダヤ人家庭に生まれる。この時代のユダヤ人家庭といえば、平坦ではない人生が想像できるが、彼女はいつ何時でもどんな立場になっても、自分の気持ちは自分の言葉で伝えた。監督は彼女の物語を教育的にはせず、彼女の信念に倣い“伝える”ことに重きをおいたと話す。授業を受けるのではなく、歳の離れた友人の話を聞くように歴史を知るのもいい。映画で伝える、1人の女性の物語『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』(原題:Simone, le voyage du siècle) (2022年 フランス 140分)監督・脚本:オリヴィエ・ダアン出演:エルザ・ジルベルスタイン、レベッカ・マルデール、  オリヴィエ・グルメ、エロディ・ブシェーズ配給:アット エンタテインメントシネ・リーブル神戸にて7月28日(金)より上映。© 2020 – MARVELOUS PRODUCTIONS - FRANCE 2 CINÉMA - FRANCE 3 CINÉMA simonemoviejp.comシモーヌ フランスに最も愛された政治家text.田中奈都子『ぼくたちの哲学教室』(原題:YOUNG PLATO)(2021年 アイルランド・イギリス・ベルギー・フランス 102分)  監督:ナーサ・ニ・キアナン、デクラン・マッグラ 出演:ケヴィン・マカリーヴィー配給:doodler 元町映画館にて7月8日(土)より2週間上映。© Soilsiu Films, Aisling Productions, Clin d’oeil lms, Zadig Productions,MMXXI人が生きる上で、どんな教育を受けるかは人生を左右するぐらい大事だ。北アイルランド紛争により、「平和の壁」と呼ばれる分離壁が存在する街、ベルファスト。平和維持が難しく、保護者たち自身も生々しい分断の記憶を持つこの街にある男子小学校では、哲学の授業を取り入れ、ケヴィン校長自ら教壇に立つ。子どもたちの間で喧嘩やいじめが起きると、徹底的に対話し、問題解決に導いていく校長の胸の内にあるのは、自身も暴力で争いを解決しようとした過去への深い反省だ。若者の自殺率が高く、暴力やドラッグが蔓延する街で、人生を支える哲学との出会いが、子どもたちを、しいてはその家族を救う光になるのではないか。負の連鎖を断ち切り、未来への種をまく哲学教室から、改めて真の教育とは何かを掴んでほしい。負の連鎖を断ち切る「対話」の授業ぼくたちの哲学教室上映スケジュールはコチラ▶上映スケジュールはコチラ▶text.江口由美89

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