感染症のトレーニングを受けた専門医ですので、専門性の高い治療に当たっています。―専門性の高い治療とは?体にはいろいろな微生物がくっ付いていて、体の中にもたくさんすんでいます。腸内細菌がお腹の調子を整えてくれているように微生物がいることは問題ではなく、病気を起こして初めて感染症の原因になります。病気を起こしていない菌は殺す必要はないし、殺してはいけません。ですから単に抗生物質で菌を殺すのはレベルの低い治療です。患者さんの病気が治って元気になるためには微生物を殺したほうがいいのか、殺さないほうがいいのかの判断能力を持つのが専門医で、それに従って治療をするのが専門性の高い治療です。―内科や小児科の専門医でもあることの意味は?例えば「熱があって炎症が出ているからおそらく感染症だろう」と依頼を受けて診察してみると実際は膠原病の一種だったというケースがあります。まず患者さんが感染症なのか、その他の病気なのかを診断する必要があります。私たちは外科の先生のようにメスで切ったり、放射線科の先生のようにCT画像を解析したり、病理の先生のように顕微鏡で組織を見たりはしません。高いスキルを持つ専門の先生方にお願いし、協力しながら総合的に治療方針を決定します。多くの診療科と連携して治療に当たるチーム医療のトータルコーディネートのような役目を担っているのが感染症内科です。オーケストラでいえば指揮者のようなもの。どこでどの楽器の演奏が入ってくるのが最適なのかは分かっていても、個々の楽器の演奏ができるわけではなく、その必要もないのです。―大学病院の感染症内科の役割は。外来の患者さんはコロナウイルス感染症やインフルエンザのように短期決戦です。長期にわたって通院する患者さんはウイルスを持ち続ける慢性の感染症で、典型的なものがHIVです。入院については感染症内科の患者さんというわけではなく、他の診療科の入院患者さんの感染症治療に当たるのがほとんどです。病院内で行われる医療行為には感染症のリスクがたくさんあります。例えば問題になったMRSAは点滴の針から感染しました。外から微生物が入ってこないように守っている皮膚をメスで切る外科手術を受ける患者さんは感染リスクがあり、内視鏡手術も皮膚に開ける穴から菌が入る可能性があります。化学療法では自分が持っている免疫細胞を壊してしまい感染リスクが高まります。―感染症にかからないようにするにはどんな方法があるのですか。方法は大きく分けて2つあります。ひとつは免疫力を付けること。外から入ってくるある特定の微生物に対する免疫を高めてやっつけます。その唯一の方法がワクチンです。食事や生活習慣で免疫力を付けるな84
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