耳にする機会が増えた「感染症」。どんな病気なのでしょうか。日本での治療の歴史や神戸大学病院の感染症内科が担う役割など、岩田健太郎先生にお聞きしました。―感染症とは?はっきりとした定義があるわけではなく、いろいろな病気がある中で微生物が原因で人間に起きる病気を医学の領域で「感染症」と呼んでいます。微生物とは肉眼では見えない小さな生物で、具体的には主にウイルスや細菌を指します。例外的にダニやサナダムシのような肉眼でも見える小さな生物が原因になっている場合も含まれています。―感染症内科ではすべての感染症の治療をするのですか。 例えばウイルスが原因でがんを発症する場合があり、代表的なものが子宮頸がんです。パピローマウイルスが原因で起きるのですが感染症内科で治療はしません。がん治療は主に外科手術や放射線治療、化学療法ですから専門医にお任せします。コロナウイルス感染症でも診断や投薬治療のように感染症内科が担う領域もありますが、エクモや人工呼吸器を使う全身管理はできませんから集中治療の先生方が担います。細菌が原因で起きる尿路感染症は泌尿器科、肺炎は呼吸器内科、あるいは感染症内科、オーバーラップする領域がたくさんあります。―日本の感染症内科の歴史は浅いのですか。医学が西洋化した明治時代のパイオニア、野口英世や北里柴三郎は海外へ出て微生物の研究をし、トレーニングを受け感染症の専門家として貢献しています。世界ではワクチンやペニシリンという抗生物質がどんどん使われるようになると、これさえあれば感染症は治るのだから頑張って研究する必要はないという考えが広まります。日本でも創薬や基礎研究の分野では頑張っていたのですが、臨床医学の分野ではレベルの低い時代が続きました。神大病院の魅力はココだ!Vol.22神戸大学医学部附属病院感染症内科岩田 健太郎先生に聞きました。82
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