KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年7月号
75/124

は売り切れていた。展示エリアでは、懐かしみながら歩く人、記録に残そうとスマホやカメラをかざす人、大好きな魚の水槽前に張り付き動かない子たち。海底へと降りていくような出口近くのスロープでは、光に浮かび上がる魚が好きだと、何度も行き来する幼子。今日ばかりは誰も咎め立てはしない。それぞれの想いが館内いっぱいにあふれている。来園者が感謝を伝えるメッセージボードは、文字通り感謝の言葉にあふれていた。出口ではスタッフと来園者が手を振り、振り返す。泣き出す子どもにつられ涙ぐむ人も。19時の閉園予定は30分延長された。そして最後の、本当に最後の三角屋根前を多くの人が囲む。感謝の言葉の後、シャッターが閉じられていく。カメラのフラッシュと拍手と感謝の言葉がいつまでも続いた。となりでは、2024年6月開業予定の新しい水族館「神戸須磨シーワールド」の建設が進んでいる。取り壊される三角屋根と新しい施設。時代は移っていく。スマスイ公式ページには、35年の感謝とこれまでの思い出を振りかえる映像やVRツアー、新しい水族館の情報が掲載されている。文/塚本 隆司参考資料:『うみと水ぞく』第38巻4号(神戸市立須磨海浜水族園、2021年3月)75

元のページ  ../index.html#75

このブックを見る